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2018年10月12日(金)

第3期ぎふ木育指導員養成講座③が行われました!

台風で延期となった、第3回の木育指導員養成講座は、9月17日と9月24日の2回に分けて実施されました。

1日目の9月17日、松井先生の挨拶からはじまりました。

「3期生は作るということに重点を置いている。世の中いろいろな木育の講座があるが、つくるというところまでいっていない。つくる、使うということの視点をもってほしい。」

というオリエンテーションがあった後、スタートいたしました。

 

今回の講座は、アカデミーのクリエーター科の授業「木工講座の基礎」「木工講座の指導」として、学生が企画・運営をしております。Cr科2年、企画者の柴田さんから、今回の講座の概要や目標、流れを確認したあと、いよいよ講義のスタートです。

再び松井先生に登壇頂き、「木でつくることの可能性」について講義がありました。

「どういう暮らし方をしたいかによって、そこに揃えていくものが決まってくる。暮らし方をもう一度考えなければならない。」

そして、森の問題、人の問題について振り返りをした後、

「木育は子供を含む全ての人が対象であるということを考えていかなければいかない。そういう視点を持ってほしい。森づくりと人づくりの中の共通点を探してください。」

「木でつくり、使っていく。皆さんの中で使うことでどう暮らし方に対する考え方が変わるかを観察しておいてほしい。」

また松井先生ご自身が、これまでつくってきた中でどう変わってきたかの経緯を紹介くださり、その中で2つのポイントに触れました。

「木でものをつくっていたとき、思い通りにいかないことがずっと続いていた。ある時、そもそも思い通りにしようというのがおかしいのではないかと考えが変わって、気が楽になった。そして、木に寄り添うという視点の獲得になった。」

また2日間を通して重要となるキーワードについてお話くださいました。

「意思とは自分らしく生きる力。同じことを意識的に繰り返すことが意思を強める。この講座の中でも反復することを意識的に入れている。自分らしく生きることに向かってほしいという願いをこめている。」

「憧れの大人という事を聞いたときに、それは文化だと感じた。子供たちは憧れの大人の真似をして成長する。」

キーワードを実践した実例として、保育園での箱椅子作りについて紹介がありました。

「誰かのために何かをしてあげることが喜びだと思える子を育みたい。」

「難しい作業でも繰り返して、単なる木工で作るだけで終わらず、願いをこめて行えるかが大事。」

実践後、園の先生たちからのアンケートを元に、子供たちが獲得したことが5つあげられ、願いを込めた木工・木育の力が解説されました。また実際に箱椅子づくりを体験された、アカデミーの卒業生でもある吉田さんからも、体験談をお話いただきました。

木でつくること・使うことにおいて、どのような視点を持ってほしいか、またその大切さについて松井先生から講義を頂き、午前は終了となりました。

 

午後はいよいよスプーン作りの時間です。

ここからはクリエーター科1年の学生が、受講生に作り方を教える立場として入るため、まずは皆さんでアイスブレイクをかねて自己紹介タイムが設けられました。自己紹介が終了し、受講生と学生がペアになった後、続けてラジオ体操の実施です。体全体を使ってつくることを意識してもらうため、学生のレクチャーのもと、しっかりと全身を動かしてのラジオ体操が行われました。

そして、道具と材料が配布された後、いよいよ製作へ。まずは、木取り(材料に線を引き、その線に沿って材料を切り、加工前の形にすること)の方法から。クリエーター科の学生から、墨付け(切りたい形に線を引くこと)とのこぎりの使い方がレクチャーされ、受講生の皆様はそれぞれ作業に取り掛かりました。

今回の受講生は大半が木工未経験者です。受講生は、マンツーマンで学生にフォローしてもらいながら、少しずつ作業を進めていきます。

のこぎりで切る作業が終わると、続いて彫刻刀(丸刀)を用いてスプーンの匙面の彫りを行います。ここでは、順目(ならいめ)と逆目(さかめ)に注意して彫り進めます。

匙面が整ってきたら、小刀を用いて、匙面裏と柄の加工に進みます。皆様小刀の扱いに慎重になりながら作業を進めていました。

小刀での加工に入り始めたところで、初日の作業は終了となりました。作業の振り返りを行ったところ、受講生の皆様からは、

「やはり難しいなと感じた。自然は思い通りにならなないことを体感できた。」

「一生懸命になりすぎて、指先だけでの作業になってしまったが、体全体で作業しなければならないことを体感した。」

といった感想をいただきました。

松井先生からは、

「皆さん普段ものを使うことはしているが、それをつくることはしていない。実際につくってみると、実は当たり前のものが良く見えていないことに気づくとおもいます。そういった観点から当たり前のくらしを見つめなおすきっかけにしてほしい。」

とまとめを頂きました。

 

さて、本日の講座はこれで終わりではありません。

続いて食のデザイン研修として、実際にいろいろなスプーンを使って食べてみるという研修が行われました。

この研修では、つくる視点と使う視点をつなげるために、用意された様々な形のスプーンから、自分が気になるスプーンを3本選び、食事に使ってみることで、その形の意味を考えてみるという事を行いました。

カレー、サラダ、スープが用意され、それぞれ皆さん実際に使ってみます。そして、そのスプーンが使いやすかったか、またそれはなぜかを発表してもらいました。

「見た目と違って、口触りが良い。」

「柄の角度があって使いづらい。」

「小さくて使いにくいかと思ったが、意外と一番使いやすかった。」

など、今後ご自身がスプーンを作る中で、形を決める参考になったようです。

また食事の前後で、受講生およびスタッフの課題となっていた、“自身を象徴するもの”の発表会も行われました。

松井先生からは、

「今後の皆さんの活動にも関わる人たちが集まっている。ぜひコミュニケーションをとって、今後につなげてほしい。」

といった言葉を頂き、夜の研修は終了しました。

 

2日目は1週間空いて9月24日に行われました。

この日はオプションで刃物の研ぎの講義が行われた後、講座がスタートしました。まず松井先生の導入から。

「完成を目指さしあせらずに取り組んでほしい。信頼、この言葉を大事にしてほしい。」

 

そして、恒例のラジオ体操の後に、小刀での作業から再開です。

空いた1週間で受講生の皆様には小刀でスプーンの成型をして頂きました。本日の作業は、そのスプーンに対し、松井先生から形のチェックを受けます。その内容を受講生ではなく、アカデミー学生が聞きます。聞いた内容を今度はアカデミー学生から受講生へ伝え、作業を進めるという形が取られました。コミュニケーションを大事にしたいという運営の思いからこのような形が取られました。時にはアドバイスを受け、時には学生に見本を見せてもらいながら、受講生の皆様熱心に作業を進められていました。

1週間の成果でしょうか。彫刻刀や小刀の扱い方が上手くなっているのがわかりました。そして、受講生と学生のやり取りも、リラックスしつつ活発に行われている様子が伺えました。

小刀で成型が終わったら、ドレッサー(金属製のやすり)、サンドペーパーの順に仕上げていきます。

最後にくるみ油で塗装をしたら完成です。今回の講義で完成した受講生は少なかったですが、皆様楽しく作業をされていました。

 

作業終了後、再びラジオ体操をして、振り返りを行いました。受講生からは、

「学生スタッフの丁寧なところを学ばせてもらった。人とのつながり、道具との出会いが勉強になった。」

「誰のためにスプーンを作りたいかを考えるうちに、形のイメージができて、それをスタッフの皆さんに共有したときにそうだねといってもらえて嬉しかった。」

「学ぶはまねるで、いろいろな人に学ばせてもらった。」

「山に登ったときのように、削っていると無の境地になれた。無心に作業できた。」

「ものをつくるのは一人ではできないということを学んだ。」

「木の気持ちに寄り添って削ることができたのが楽しかった。」

といった感想をいただきました。

最後に松井先生から、

「3期生はものを作ることを講座の中で多くやってもらう。これが3期の独自性になる。そして、それを活かしてもらうことが、今後のぎふ木育指導員の中での多様性につながる。ものを大事にして、丁寧に暮らしていくことを大事にしてほしい。」

というメッセージを頂き、今回の講座は終了しました。

クリエーター科 2年 若林知伸

今回は、台風の影響で1泊2日の講座が、1週あいた2日間の講座となりました。そのお陰で、実質8日間、木でつくることに向き合いう時間を獲得できました。

自然は思い通りにはなりません・・・

木も自然の一部。思い通りにならないこと、予期しないことも悪いことばかりではありませんね。

木でつくることを通して、様々な可能性を実感していただけたことと思います。

講座主任 松井勅尚