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2017年04月25日(火)

狩猟が森林を救う?

ドイツでの「狩猟・獣害対策」視察報告

みなさんJIRIです。今回は森林文化アカデミーが連携協定を結んでいるドイツのBW州、ロッテンブルク大学に狩猟・獣害対策の視察に行かれた伊佐治先生の報告です。

 今回の報告会には、学生だけでなく、岐阜大学の先生や現役ハンターの人も参加されました。

ドイツでの「狩猟」は高い社会的ステイタスを示すもので、ハードルの高い趣味でもあります。ドイツで銃猟をする経費などを考えると年間50万円くらい掛かる。日本で狩猟をした方が安い。

ドイツでは初心者でもライフルが所持できる(日本では散弾銃使用経験が10年以上必要)。

捕獲獣としてのシカの価値が日本と比べ物にならないほど高く、シカ肉の流通、角や頭蓋骨によるトロフィーも珍重される。

狩猟免許の取得には、60時間の座学、60時間の実習の後に、学科と実技の試験を受けなければならない。日本でいえば、自動車運転免許を取得するような手間と経費が掛かる。

ロッテンブルク大学では、BW州で唯一、学校の授業で狩猟免許を取得することができる。

この授業の中では、狩猟の文化も学ぶ。動物(獲物)を弔う狩猟ホルンの儀式、獲物の、並べ方に、小枝を口にくわえさせるなどのルールが伝えられる。

 

ドイツの林業は基本的に「天然更新施業」ですが、今回の視察地の被害程度は、比較的軽度であった。広葉樹の中でもオーク(ナラ類)は食害に遭いやすいので、オークを植栽する時には、食害防止チューブなどを設置して保護する。

日本で多く見られるネットは、動物の行動範囲を制限するので、あまり使用しない。しかしこの理論は動物管理というより、狩猟者の立場からの意見のようです。

なんとシューティングセンター(射撃訓練施設)は、町の郊外の工業団地の一角にあるなど利便性の優れたところにあり、関連グッズの品揃えも豊富。

射場はすべて屋内施設で、散弾銃の射撃場は、体育館のような大きな建物の中に、ライフルの射撃場は、地下にあり、300mレンジの射場もある。

ちなみにライフルの弾を床面や天井面に当てると、100ユーロの反則金を支払う必要があります。

日本の狩猟者とドイツの狩猟者では立ち位置が違う。

日本では、基本的に狩猟者が、行政、農林業者の「獣害対策」を応援する立場にあるが、ドイツでは、自分の獲物を確保しておきたい狩猟者の意向が強く、自分の猟区での個体数調整や柵の設置を望まない。また、ドイツでは、獣害が発生すれば、被害者に狩猟者から保証金が支払われるため、農林業者の当事者意識も薄い。

ロッテンブルク大学は、隣接する公有林に845haの狩猟実習フィールド設定し、そこで年間約200頭のシカが捕獲される。

実習フィールドには、71基のハイシートと132基の射座(待ち場)が設置され、各ハイシートの使用状況や捕獲頭数などのデータがGISで管理、分析されている。

狩猟ライセンスを持つ学生は、授業以外でもハイシートを使用することができ、事前予約がスマートホンで行えるシステムが構築されている。

さて、日本の林業を見ると、全国各地でシカの食害によって、再造林や天然更新が不可能になってきています。だからこそ、適正な生息密度を研究し、適正管理のための狩猟を実施しなければ、森林は守れないのです。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。