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2017年07月28日(金)

ニホンジカの食害から植林木を守る。~ドイツ連携~

岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムのWG、『保育の合理化WG』の第二回日独獣害防止用資材検討会を開催しました。

このWGは有限会社根尾開発代表取締役の小澤健司社長さんがリーダーを務め、BERRY PLASTICS GROUP Incの獣害防止チューブTubexを県下の2試験地(根尾開発さんの植栽地と中原林業さんの植栽地)で試験設置した結果を、ドイツのマーティン・ザトラーさんかは報告してもらいました。

昨年から本巣市と山県市で試験をしている獣害防止資材は、①Tubex Ventex 12D、②Tubex Ventex、③Tubex Ventex Clear、④Layflat Treeguard、⑤Layflat Shelterguardの5種類で、樹種は主にスギ、一部ヒノキを対象としています。

積雪が160cmほどある本巣市では、生分解性素材である、①Tubex Ventex 12Dは雪によって破壊を受けやすく、積雪が70cmほどだった山県市では問題なく使用できた。

②Tubex Ventexは雪の害も受けづらく、それ以上に苗木の上長成長に優れていた。

③Tubex Ventex Clearはドイツではモミを対象に開発されたものであるが、こりらは雪害も成長も②に劣っていた。

薄い緑色がかっている①Tubex Ventex 12D、②Tubex Ventexに守られたスギの苗は緑色の色合いも良いが、③Tubex Ventex Clearで守ったスギの葉色は光不足のような色合いとなった。

メッシュ状の④Layflat Treeguardとその全面を生分解性フィルムで覆った⑤Layflat Shelterguardは少し問題が発生した。

④Layflat Treeguardは積雪160cm地ではネットが雪に圧縮されるように壊れ、積雪70cm地のヒノキではメッシュからヒノキの枝が出てしまうことが明らかとなった。

⑤Layflat Shelterguardは積雪160cm地では意外なほど有効であったが、積雪70cm地でのヒノキでは、蒸れ枯れと菌類の繁殖が問題となった。

ドイツで標高800m地でのカラマツ使用例では、4年後でも順調な成長をしているのが分かります。

また、ダグラスファーの場合は初期成長が良いので、長さ90cmのチューブを施工するだけでも順調である。

加えて、チューブ利用によって上長成長が促進されることから、現在は根系の成長にも注目しており、今後の試験に反映させたいとのこと。

 

続いて、積水樹脂(株)アグリグループの佐藤清純さんから、積水樹脂の獣害対策の取り組み結果について報告を頂きました。

積水樹脂では、「イボタケ」という支柱を販売しており、これを有効利用しながら①不織布タイプの樹木保護チューブ、②ワリフタイプの樹木保護チューブを森林文化アカデミーのエゴノキプロジェクト現場で試験したり、滋賀県や長野県などで試験されています。

積水樹脂の樹木保護チューブは直径150mm、長さ180cmほどになり、これを被覆鋼管支柱(イボタケ)で支えます。

滋賀県や長野県では順調な成果が得られていますが、エゴノキでは不織布タイプで蒸れが発生して少し問題がありました。、

積水樹脂ではニホンジカやニホンツキノワグマによる成木の樹皮剥ぎを防止するための成木保護ネットも作成されています。

成木保護ネットは長さ2mに切って、それを立木に巻きつけて40cm間隔でバンド留めします。地際部分は小枝などで押さえて完了です。

積雪が多いところでは多少のズレが見られますが、問題なく効力を発揮しています。

さて、試験はまだ9ヶ月経過した時点です。こうした試験は試験地を提供してくださる森林技術開発・普及コンソーシアムの皆様のお陰であり、それを森林研究所と森林文化アカデミーで調査させて頂くことで成果が得られます。

今後の成果報告もご期待下さい。以上報告、川尻秀樹でした。