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2025年09月26日(金)

日常が最良になるように、非日常が最悪にならないように「木造建築の防火」

木造防火の第一人者である安井昇先生に講義をお願いするようになってもう10年以上が経ちました。
木の耐火性能を実験で証明し続けて法律を改正し、さまざまな建物に木を使えるようにしてきた安井先生が、最先端の木造防火を誰でもわかるように噛み砕いて講義してくれる貴重な授業です。

2年間通年の授業なので前回は長野の「八ヶ岳の秘密基地」で講義・実習をしていただき、今回は岐阜が舞台でした。
せっかくなので建物単体だけではなく「町の防火」という観点で現地実習をしていただこうと、100年ほど前に市街地大火を経験した郡上八幡に赴きました。

現地に行って、建物や地形、気候を感じながら、現在の八幡町が火災に対してどのような対策をとっているかを、安井先生に解説していただくという、
まるで「ブラタモリ」のような構成の実習で、とても贅沢な時間になりました。
伝建地区でもある町の北側一帯は、「北町の大火」として知られる火災の後に防火のために水路を増設したり、道を拡幅しただけでなく、軒先に消火バケツを吊るしてあるという、住民の防火意識の高さが伺える特徴的な町並みになっています。袖壁や窓のない妻側の外壁などを指さしながら、建築的な防火の設計も教えていただきました。歩いていると風がよく通る道で、火災当時も風によって酸素が供給されて燃え広がったと予測できました。板葺だった屋根に飛び火したという記録も残っていて、現在は板金屋根の町並みが八幡の特徴になっています。

八幡は空き家対策やまちづくりでも地方創生の成功例として先進地であり、そこでの防火や木造建築のあり方は、多くの示唆があったと思います。
天気にも恵まれ、八幡生まれの学生さんがルートを考えてくれたこともあり、楽しく、深い学びの二日間になりました。
安井先生、加來さん、今年もありがとうございました!

 

木造建築教員:松井匠