活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2023年11月24日(金)

卒業生・内藤光彦さんが高岡クラフトコンペに入賞

クリエーター科・木工専攻を今年の春に卒業した内藤光彦さんが、「工芸都市高岡2023クラフトコンペティション」で「個人的な視点賞(小林和人賞)」を受賞しました。高岡クラフトコンペは40年近い歴史を誇る、工芸分野の代表的な選考会の1つです。今年は応募者総数207人、点数665点、うち入賞はわずか9点で、快挙です。

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤光彦さんの作品「縄文の香り」(工芸都市高岡2023クラフトコンペティションのウェブサイトより)

内藤さんの入賞作品は、「縄文の香り」という名の籠。素材は大太藺(オオフトイ)という草です。実はこの作品、木工専攻2年生の授業「商品化」で製作した籠がもとになっています。そして内藤さんとこの素材、オオフトイとの出会いもアカデミー在学中のことでした。木工専攻に所属しながら森林環境教育専攻で植物生態学が専門の柳沢直先生に指導を仰ぎ、素材の研究を続けてきました。

素材との出会いから今回の受賞までを、作者の内藤さんに寄稿いただきました。内藤さん、おめでとうございます!

 

(以下、内藤光彦さん文)

 アカデミーに出会い、人に出会い、木工に出会い、大太藺に出会う。
この数年の新たな出会いがなければ、私が草の籠を編むことはなかったかもしれません。そして今、全ての出会いに感謝しています。

 2021年の夏、大太藺を初めて刈り取った時点での喜びは、大好きなラダーバックチェアーの座編み材をこんなに身近なところから手に入れることができるのだという限られたものでした。大太藺への気持ちが特別なものとなったのはその冬、実際に座編み作業をした時でした。乾燥させた大太藺(見かけはただの枯れ草と言っていいでしょう)を水に浸け柔らかい状態に戻します。生っぽい草の手触りや、匂いなど感じながら、4、5本を1束にして木のフレームに捻り付けていく。道具を介すことなく自分の手の中を草がすり抜けると、直前まで明らかにただの草だったものが座面になる。このダイレクトな原始的な1対1のやり取りが、人間がものを作る初源的な喜びに満ち溢れていると感じられ、「すごい!なんかこれすごい!楽しい!」と座面を編み終えるまで言っていたのでした。そう、私は出会ってしまったのです。

 この喜びと同時に、大太藺には座編み材としてだけではなく、他の用途としても大きな可能性があるのではないかと感じていました。大太藺は材料になる部分は全て茎であり、その茎の中が全てスポンジ質のもので埋められているのが大きな特徴です。大太藺の編みものにおいては、このスポンジの捻り潰し加減と乾燥することの形状記憶的作用でものの形を整えています。もう一つの特徴としては、大太藺を1区画刈り取ってみると、根元部分の直径が細いものは2mmから太いものでは2cmまでバラバラなサイズの収穫になってしまうことです。これはとても不均一な素材とも言えるのですが、捉え方によっては様々なサイズが一度に手に入る素材とも言えるのです。

今回受賞した籠はこの2つの特徴を生かし編まれています。捻りをかけ、さらに縄状に綯うことで強度と形状を安定させ、部分部分で大小様々なサイズを使い分け、100%大太藺のみで編みあげています。また、縄状にしたことで生まれた縄文が結果的にもの作りの初源的喜びや、祈りの様なものを表してくれるものとなりました。

 アカデミー時代から課題研究で大太藺に関する研究を進めてきましたが、今年に入ってからの半栽培、収穫、乾燥、製作などの様々な場面においても新たな発見がいくつもあり大太藺への興味は尽きることがありません。この受賞をきっかけに、ここからさらに大太藺文化の醸成に尽力していきたいと思います。皆さま、今後とも大太藺をよろしくお願いいたします。

内藤光彦さんのインスタグラム
@forest_morinois