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2017年03月27日(月)

MSZUが凄い‼︎ 独BW州狩猟・獣害対策視察報告(その1)

先週、岐阜県森林技術技術開発・普及コンソーシアム、NPO法人猪鹿庁の方々らと共に、ドイツBW州に滞在し、狩猟・獣害対策の情報収集、日独林業シンポジウム打合せ、チェンソー防護服メーカーPSSとのミーティングなどを行って来ました。

活動拠点となったロッテンブルグ林業専科大学では、担当の先生方が、様々なプログラムを準備して私達を迎えていただき、全ての日程をとても円滑に終えることができました。

私の担当の狩猟や獣害対策についても、いろいろと興味深い情報収集ができましたのでご紹介したいと思います。

 

最初に紹介するのは、MSZUです。ここは、狩猟に関する周辺環境の視察地として案内された施設です。

MSZU(MÜLLER SCHIESSZENTRUM ULM)とは、ウルム市にあるミューラー 射撃センターのことです。ここは、日本人ハンターの目から見ると、まさに夢のような凄い施設でした。

ロケーションがすごい!

先ずは、そのロケーションが凄い。日本の射撃場は周囲に人家のない、山の中にあるのが一般的だと思いますが、MSZUは、ウルム市の中心部から車でわずか15分ほどの田園に囲まれた工場群の一角にあります。車道にも面し、とても利便性の良い場所です。

施設の外観は、いたって控えめで、周辺の会社施設と変わりありません。施設入口にオスジカのオブジェがあることで、かろうじて狩猟に関連した施設であろうことが伺われる程度です。しかし、その施設の中身は凄いことがいっぱいでした。

MSZUのトレードマークは、弾痕で描かれた雄シカの顔です。

射撃場がすごい!

次に、驚いたのが、射撃場。なんと、ここの射撃場は、散弾銃射場、ライフル銃射場ともに屋内にあるんです。どおりで、ここに着いた時、射撃場にも関わらず、銃の発射音が聴こえなかったはずです。

散弾銃射撃場は、奥に見える大きな倉庫のような建物の中にあり、トラップ、スキートどちらの種目にも対応しています。

一方、ライフルやハンドガンの射撃場は、全て地下に設置されており、25m、100m、300mレンジの射場が、別々にあります。

地下の300mレンジ射場なんて考えもしませんでした。確かに、地下であれば、発射音も、流れ弾も心配する必要もないし、土地利用の面からも合理的です。

各レンジでは、一般的な的紙だけでなく、プロジェクターが映写する動画を標的に実弾射撃をすることができます。実写やCGの動画が、獲物や難易度別に何十種類も用意されており、射撃後は、着弾箇所をスクリーン上で確認することができます。もちろん、ランニングターゲット(的紙がレール上を左右に移動)の射場も備えられています。

この施設では、プロやアマチュアのハンターやシューターが射撃練習するだけでなく、銃を持たない一般者も、インストラクターの指導を受けながら実弾射撃を体験することができます。このような設備があれば、実際の猟場でも役立つ効果的な射撃練習を行うことができますね。

日本国内では、所持許可のない者が、装薬銃(火薬を使用し弾丸を発射する銃)を撃てる機会があるのは、所持許可申請に先立って受講する教習射撃の時だけで、それ以外に実銃射撃ができる機会はありませんから、こうした環境は、実に羨ましい限りです。

大きなドイツ人インストラクターに指導を受ける小さな日本人(私)。 背後の銃架は銃身冷却機能付きです。

用意されている動画の数々

ワーゲラー先生の射撃 サイレンサー(減音器)に注目 ドイツでは、合法的に使用できます。

せっかくの機会ということで、私たちも、ここの25mレンジ射場でライフル射撃を体験させていただきました。使用した銃器は、ご当地ドイツ、ブレイザー社製の速射性に優れるストレートプル(直動式)ボルトアクションライフルです。銃弾は、国内の狩猟でも一般的な308win弾(7.82mm)でした。

射撃の前にインストラクターから、射場の天井や床を撃ったら、罰金100€と告げられます。

25mの距離で、さすがにそれはないとは思いましたが、天井や床を見ると結構な数の弾痕があり、メンバーの表情も急に真剣になります。

標的は、イノシシの実写映像が使われました。はじめは、ゆっくり歩くイノシシから。慣れてきたと見るやインストラクターが、難易度の高い画像に切り替えます。すると、イノシシが小さくなり、スピードも上がり、途端に照準が難しくなります。

銃を発射すると画像が一時停止し、着弾位置が表示されます。撃ち遅れや、狙いのズレ等、自分の癖を確認することができ、インストラクターも修正点を指摘してくれます。必要とあれば、着弾データーから、着弾の箇所や角度等をさらに詳細に分析することもできるようです。

ロッテンブルグ大学のワーゲラー先生も射撃の腕前を披露してくれました。ライフルは、やはりブレイザー社製で、サウスポー仕様です。銃身には、サイレンサー(減音器)が装着され、ストックもカスタム物、他にも色々チューンアップがされていそうです。

先生の射撃は、素早く正確で、安定しており、私達とは、当たり所が違います。さすが、ベテランイェーガーです。

メンバーの射撃が終了したところで、お約束、天井や床の弾痕をインストラクターが確認します。新たな弾痕は見つからず、心なしか残念そうな顔でOKサインを出してくれました。こちらはホッと一安心です。

なんといっても、実銃・実弾による射撃ですから、私達にとってこれ以上リアルな射撃練習はありません。本当に貴重な体験をすることができました。このような設備が日本にも有れば、狩猟技術の向上にもずいぶん繋がることでしょう。

ショップが凄い!

最後に紹介するのは、この射撃場に併設された狩猟・射撃用品ショップです。このショップは売り場面積が、50m四方ほどもあり、銃器はもちろん、弾薬、衣類、シューズ類、猟犬用品、刃物・小物類、書籍などあらゆる狩猟・射撃関連用品が、多種、大量に揃えられています。ここにくれば狩猟、射撃に必要なものは必要な物は、全て見つけることができるでしょう。

中でも、圧巻は、銃器類。ざっと見ただけでも300丁以上のライフル銃、散弾銃、ハンドガンが陳列されていました。これだけの数の銃器が一つの店舗に揃い、手に取って品定めできる環境なんて、日本ではとても考えられません。

 

とにかく、MSZUは、本当に凄い施設でした。 もちろんドイツでも、このような規模の施設がどこにでもあるわけではないですが、こういう施設があることを見ても、ドイツでの狩猟の位置づけの高さが伺われます。

こんな施設がもし、岐阜県にあったら、全国からでもお客さんが集まることでしょう。 (集まりますよね?)

※ MSZUについては同社ホームページ(https://www.mszu.de/)で詳細が公開されています。 興味がある方はそちらものぞいてみてください。

以上、報告は、狩猟・森林獣害担当 伊佐治でした。

つづく