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2024年01月29日(月)

きのこの線虫研究「教員の道具箱」シリーズ

林業専攻教員の津田です。

 

私の大学時代の出身研究室は菌類や線虫などを研究していたところで、周りにはマツノザイセンチュウ(松枯れの病原体です)や菌根菌を扱っている人がたくさんいました。そのような人たちに揉まれながら、私は「きのこに棲んでいる線虫」の研究をおこなってきました。その内容をここで書くと長くなってしまいますので、ここではきのこなり何なりから取り出した線虫をどうやって数えるのか?ということに絞って、道具を紹介します。

シラキュース時計皿

 

そもそも線虫の多くは体サイズが小さいものが多いです。種によって様々ですが、平均して体長1mm前後と思って下さい。そのような小さな線虫を数えるための道具がこれ、内径5cmのガラスのお皿。シラキュース時計皿と言います。

左がわかりやすいですが、同心円状の線と6等分にケーキカットするような線が引かれています。見えにくいですが右の方にも同様の線が引かれています。現行品は左ですが、実は右の方が使いやすかったりします。

 

 

線虫を含む懸濁水をこのお皿に入れて、真ん中から外側の区画の順に数えていきます。二重線の部分がスタートラインでぐるっと一周数えたら外側の円に移って数えていきます。もちろん線虫は動いているので出入りはありますが、±0としてその時に区画内にいるものだけを数えます。

実体顕微鏡

ただし線虫は小さいので肉眼では数えられません。このように実体顕微鏡のステージにのせて数えます。

数取器(カウンター)

顕微鏡を覗きながら数え上げるには数取器(カウンター)を使います。日本野鳥の会の人や交通量調査の人が使っているやつですね。

 

実際に覗いた写真

1枚目写真の右のお皿を使って実際に顕微鏡で覗くとこんな感じです。ちょっとブレていますが、真ん中の丸と周辺の区画がわかります。うねうねとしている大小さまざまなものが全て線虫で、親が産んだ卵(楕円形の点)も見えています。これを数えていくわけですが、これだと真ん中の一区画に100頭以上。全てを数えたとしたら何千頭〜何万頭にもなるでしょう。流石にこれは数えられません。このような場合は早々に見切りをつけて希釈します。

 

メスシリンダー

希釈するための道具はこれ、メスシリンダーとかき混ぜ棒です。かき混ぜ棒はお風呂のお湯を混ぜるやつ(湯かき棒と言うそうです)のミニチュアのようなもので、針金で自作。このメスシリンダーに線虫懸濁液を入れて希釈します。例えば懸濁液を入れて水を足して100mlにし、かき混ぜ棒で混ぜて均質にし、1ml取ってその中の線虫を数えるわけです。複数回数え、希釈倍率(この場合は100倍)をかけると元々の線虫数が推定できます。

野生のきのこを採ってきて調べると様々な線虫が出てきます。きのこを食べることだけを考えるとあまり気持ちの良いものではないかもしれませんが、その生態も多種多様で興味深いものがあります。人の目には見えないところで繰り広げられている世界がすぐそこにある。そう考えると何だか面白くなってきませんか?