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2020年04月15日(水)

自力建設「Cobiki」竣工しました。

入学して早1年、自力建設も完成に近付いてきました。今回はⅭobikiの意匠の見せ場である、ルーバーの取り付けと、壁、建具の完成までの様子を紹介します。

ルーバーとは、板を隙間を開けて平行に取り付けたもので、Cobikiでは人通りの多い東面にこれを使いました。Cobikiは大きなノコギリで木材を加工する、「大鋸挽き(おがひき)」という昔の技術をモチーフにしています。このルーバーはノコギリの切れ込みの様にみせ、Cobikiをシャープでかっこいい印象の建物にする狙いで取り付けました。

この画像は、葛飾北斎が「富嶽三十六景」の中で描いた大鋸挽きの絵です。土台の上に木材を乗せ、職人がノコギリで加工しています。

 

Cobikiは丸太の柱を土台に見立て、その上に木材が乗っかっているイメージでデザインしてあります。

ルーバーの表面はかんな盤でツルツルに仕上げず、ザラつきを残しました。Cobikiは簡易製材小屋で、木を丸太から板に加工する施設です。山と里をつなぐ中間的な建物になるので、完全に仕上げた状態よりも野性味を残した方が良いと考えました。


ルーバーはL型の鋼材を上下に取り付け、そこに板を止めてできています。(写真の黒く見える部分が鋼材です。)


この納まりにした理由は2つあり、1つ目はルーバーの取替えが楽であることです。木材を加工する場所、せっかくならメンテナンスもこの場で出来たら良いですよね?そんな効率的な使い方をしてもらうために、できるだけルーバーを簡単に取り外しができるようにしました。この作業は、寸法を合わせて板を製材し、簡単な加工をした後にビスで止めるだけのもので、労力や時間があまり必要にならない程度のものになっています。

2つ目は縦ラインの強調です。ルーバーは1枚60㎜×295㎜で長さが3000㎜程あります。そこそこの重さの木材が15本並んでいるのですが、これを支える部材を例えばルーバーの中央と上下に横切るように取り付けると、きれいに縦に並んだルーバーのビシッとしたシャープな印象を邪魔しそうです。そこで強度がある鋼材を使い、横切る数を少なくし、細い線で支え、違和感のない見え方にしました。縦が際だち、屋根のつくりとも一体感を感じる美しいつくりになりました。

屋根は、写真の両側に見える梁で支えられていて、その間にはスリット状に部材を5本入れてあります。ルーバーからビュッと伸びていく様に部材を取り付けました。全体が気持ち良くつながりました。

足元は少し浮かせてあります。基礎にベタ付きにしないことで、ルーバーの迫力を残しつつ圧迫感を消しています。さらに雨水が溜まらない工夫にもなっています。

 

続いて壁を作っていきます。まず枠を取り付けてから板を貼っていくのですが、ここでもうひと手間加えます。
写真の下の方に板が置いてあるのが分かるとおもいますが、これは板を貼る順番を決めるために一度並べ、色合いを見ている所です。一つ一つに個性がある木を使う、木造建築ならではの作業です。

壁は「相決り(あいじゃくり)」という加工をしています。雨水が入ってこないように板を重ねて止めてあり、斜めにカットしてある部分も水が溜まらないようにするための工夫です。板と板の間の隙間は、木の収縮による、割れ防止のために開いています。

壁が付くと一気に進んだ感が出てきました。
右の壁は桟木入れになります。
左の壁は簡易製材機ホリゾンの替え刃などを入れる建具を付けていきます。

桟木とは木材を置く時に、木材と木材の間や、地面と木材の間に敷く角材のことです。これがあることで隙間に空気が通り、木材を乾燥させる事ができます。この桟木の収納場所をしっかりと作る事で、散らかった感じが出ない、きれいな状態で作業してもらえると思いました。壁に厚さの異なる2種類の木材を打ち付け、その上に板を貼り、前後2段に桟木が入るようにしました。限られたスペースでたくさん収納ができます。
続いて建具を作っていきます。

枠を組み、そこに板を貼り、

取っ手の部分をノミで落とし、

取り付けるとこんな感じになります。手前に引くと外れるようになっており、スムーズに開け閉めができました。ホリゾンの刃や、掃除用具が入る予定です。建具の上の部分はオープンになっており、トビなどの製材時に使いそうな道具を立てかけておけるようになっています。

完了検査も無事終わり、ついに竣工しました。長かったような、短かったような、とても濃い時間でした。建物自体は完成し、後はホリゾン関連の作業のみです。使ってもらうのが楽しみになってきました。

木造建築専攻  松下 昌太郎