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2022年07月11日(月)

山村を”手で”理解してみよう!(山村集落論 第2回目)

<2022.7.11> 森林環境教育の選択科目のひとつ、「山村集落論」は・・・

「山村集落とはどんな社会か、歴史、変遷、都市との関係、現状と課題、可能性について基礎知識をもつ」(シラバスより)

というものです。新米教員のこばけんにとっては、今のところ唯一の講義室での授業です。「現地現物」がモットーのアカデミー。現地に行くのが何よりの学びなのですが、先輩より「教室でやる授業も必要だよ」と言われ、苦手な室内の授業プログラムづくりにチャレンジしています。

前回、 第1回目 は、”頭”で学ぶ会。学生のみなさんそれぞれの”田舎”のイメージを確認した上で、法令による山村や中山間地域の定義を知りました。第2回目となる今回は、集落を”手”で知る演習をしてみました。

私が住んでいる郡上市明宝の集落の白地図を用意。ここは山間の集落で、全戸数は50世帯ほどの地域です。

白地図は「GISぎふ」より作成

まずはこちらを「山」「川」「田畑」で色分けてもらいます。作業するのは地図記号がない白地図なので、勘で塗り分ける部分もあります。

地形が塗り分けられたら、次は「人工物」と「空き地」を塗り分けてもらいます。こちらはGoogle Mapの通常の地図(航空写真でないもの)も参考にしました。

「ひさびさの塗り絵、楽しい!」の声も

 

ここまでスムーズに作業をすすめる学生のみなさんに、なんで塗り分けられたのかを聞いてみます。特に「田畑」と「人工物」はなぜそれだと思ったのか聞いてみました。お気づきの通り「自然物」と、田畑も含めた「人工物」とでは、地図で明らかな違いが見て取れます。

次は、塗り分けた地図にトレーシングペーパーを載せて、この地域を誰が管理しているのかを、「国・県」「地方自治体」「民間事業者」の領域だと思うところを塗ってもらいます。塗り終わった後、トレーシングペーパーだけにしてみると、広大な山や田畑、その周辺が空白となっています。この空白部分が、基本的には地域の人々が担っていくところとなります。

山村集落を維持管理していくには、こうした”自分達でやる”ところがとても多くあるということを感じてもらえたようです。一方で都市、都会は、地域住民”以外”が管理・運営していくエリアが多くを占めていきます。第1回目の<都会〜まち〜田舎>の差異を、”机上で”かつ”手で”実感してもらえたらいいな、と思います。

都会と違い、山村集落はその大きなエリアが地域住民による管理

さてワークついでにもうひとつ。この地図をみながら、もし自分がこの地域に住むとしたら、何が足りないか?を考えてもらいました。私が住むこの集落には、小学校や病院、商店やスーパー、カフェなどはありません。もちろん、明宝地域、また郡上市の範囲にはあります。

けして便利ではないこの地域に、なぜに人が住み続けるのか。その要因は? 人々をつなぐ集落にあるものは?など、”目に見えないもの”も想像してもらいました。歴史や地縁、精神的なことなど様々な要素がありますが、コミュニティの人々をつなぐものを、海外の事例では「glue(のり、接着剤の意味)」ともいうそうです。

地図や写真、映像だけでは集落のカタチは捉えることができません。後期から始まる地域調査などの実践では、目に見えるもの以外の人々の想いにも真摯に耳を傾ける姿勢を、アカデミー生には身につけてほしいと思います。

 


 

最後に、集落の変遷を、日本の歴史と一緒に考えます。

例えば、平成の大合併で誕生したのが郡上市。その前は、明宝村(明方村から村名変更。その前は奥明方村)。その前は、私の住んでいる集落で一つの「村」でした。

明治、昭和、平成と、国の政策による「合併」によって、全国の山村集落 の形はどんどん変わっていきます。そして時代に応じて人々の暮らし、意識、経済のあり方も変化していきます。それはとても急速で、たった100年くらいの時間の流れでした。長寿のお年寄りは、この歴史すべてが自身の人生くらいの時間なのです。

地域の呼称に人々は愛着があり、それが地域の人々のアイデンティティになっていることも多いです。山村、集落のとらえ方はさまざまな切り口がありますが、地域の名前とその変遷を、国の思惑、その背景にある社会や世界情勢、そして現代の人々の意識と合わせてとらえていくことが必要だと思います。

・・・と、ここまで先輩の「教室でやる授業も必要だよ」の指導通り”教室”で行ってきましたが、早くもギブアップ(苦笑)。机上で伝えることに自分の能力の限界を悟り、やはり第3回目はフィールドに出ることに急遽決定!!夏本番となってきたので、山や川や神社など、集落を構成するものを現地の方と一緒に体感しながら、最終回の仕上げを学生のみなさんとすることに。そしてこの科目の修了後は、「山村経営」「山里の聞き書き」「地域調査法実習」「参加型のまちづくり」などの科目へとつながっていきます。

今回の授業プログラムづくりには、以前「岐阜県コミュニティ診断士」受験のために受講した菊本先生(現・岐阜協立大学)の「NPOコミュニティ論」をとても参考にさせていただきました。集落の成り立ちやコミュニティの現状や課題を学びたい方は、こちらの受講、お勧めですよ!

そしてアカデミーでは、その先にある「現場での実践」に学生が取り組める場づくりも充実させていきます。

准教授 小林謙一(こばけん)