林業専攻
卒業生の進路

塩田 昌弘 -健全な森林を育て、山主に喜んでもらえる森を目指して-

健全な森林を育て、山主に喜んでもらえる森を目指して

 

プロフィール

森林文化アカデミー3期生

1975年生まれ 栃木県出身

20代前半は、八ヶ岳南麓でログハウス建築に従事。港から運ばれてくる外材を使っていたが、身近な山に生えている木を使いたくなり、2003年に森林文化アカデミーへ、卒業後は、架線集材を得意とする素材生産会社で林業現場に従事した後、縁あってスギ・ヒノキなどの山を管理する(公益)岐阜県森林公社へ入社。

 

質問1)今の仕事内容を教えてください

人手が入りにくい奥地で展開してきた拡大造林地(広葉樹から針葉樹に樹種転換した山)を、100年かけて地元の方に帰すための仕事に従事しています。
主に管理しているのはスギ・ヒノキの山で、これまでの履歴を片手に山を観て、次に必要な施業を考え、測量・設計し、事業として発注する仕事をしています。入社した当時は、下刈りや除伐、保育間伐などの事業が多くありましたが、最近では作業道の開設と木材搬出を伴う利用間伐が多くなりました。

質問2)今の仕事で大変だなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください

公社の管理している山は、いわゆる奥地が多く自然環境的にも厳しい場所が多いです。その奥地に向けて道を開設し、木材を搬出し販売するという一連の事業を考えることが、仕事としては多いのですが、山には災害につながる可能性のある地形地質があることも、同時に学んでいます。なので、そういった地形地質の現場を回避できない時は、大変です。というか、悩みます。
迷う時は、過去に開設した道を見に行ったり、災害を受けた箇所を見に行ったりもします。そして、諦める時もあります。
一方で、何度も通った現場に道ができ、その道の開設を報告した山主さんから、「ありがとう、これで山を孫に案内できるわ」なんて言葉をいただくと、また明日も現場に行こうと思います。

 

蛇足ですが、日々感じることをもう一つだけ。
体をうごかし汗をかき、腹が減ったら飯を食い。日が暮れたらよく眠る。前職も前々職もそんな仕事で、シンプルな回路が身に染み付いています。そのことを差し引いても、今の仕事の補助金を活用するための手続きは、私は大変に感じます。もっと合理的に効率よくお金の回る仕組みに移行できないかな?このままでは、林業に投下されるせっかくの税金がモッタイナイ。と思いながら事務仕事をこなしています。

 

質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

今の仕事に就いてから多くの学ぶ機会を得ています。さまざまな山に入り、歩き観察し、人と出会い話を聞き、木ってどうやって育つのか、山の道ってどうやって検討するのか?木材ってどうやって売るのか?様々な場面で教えてもらっています。
また、現場からだけでなく、県や国の研修にも参加させてもらい、健全な森林の育成のために必要な知識を学ぶ機会をいただいてきました。そして、学びきれない面白さをいっぱい感じてきました。
この学びを、どんな形になるのか地域に貢献する道を見つけながら、今後も学んでいきたいと思っています。

 

質問4)森林文化アカデミーに入ったきっかけは?

「木は生育の方位のままに使へ」
ログビルダーをやっていた時に、山に入って木を観察し始めるキッカケになった言葉です。スギもヒノキも見分けられなかった当時、何も分からないまま近くの山に入っては、斜面の向きと枝の張り方、樹皮の様子や根の張り方などを観察していました。観察を続ける中、抱えきれなくなった疑問に背中を押され、もっと山に生えている木を学びたいとアカデミーへの入学を決めました。

 

質問5)アカデミーで得た学びは何ですか?

山仕事は面白い。本当に、ただ、それだけを学ばせてもらいました。2年間はあっという間でしたが、木がどうやって育つのかが分かってくると、自分が山に入り汗を流した分だけ、目の前の木が元気になるような気がして、もっともっと山に入りたくなりました。

 

質問6)専門分野以外の授業やプロジェクトで、役に立ったものはありますか?

環境教育の授業で参加したキャンプが印象深いです。小学生を対象にした一週間近くのキャンプで、様々な分野の同級生たちと準備し、地元小学生と寝食を共にしながら、毎食のご飯をつくり、ロープワークやナイフワーク、ドラム缶風呂やナイトハイクなどを楽しみました。
多彩な人が集まっているアカデミーならではのキャンプで、子供を楽しませようと次から次へとアイデアが出てきて、その準備は大変でしたが、一人一人が「子供たちに森の“体験”を」という目的のために、知恵を絞って活動するキャンプでした。
一つの目的のためにみんなで活動し、最後には子供や親御さんから感謝が返ってきました。
当時のことを思い出すと、林業の現場も地域の人とつながる仕組みの中でこそ活かされるのではないかと思えたりして、働くことの原点に思いを馳せられる、良い”体験”の一つです。

 

質問7)アカデミー入学前の仕事が、今に活きていると感じることはありますか?

良くあります。前職では、港から運ばれてくる末口34cm長さ12mの北米産のダグラスファーの皮をむき、墨を付け、製材し、仕口を加工する、そんな毎日でした。多くて一日に3本、複雑な部材の時は、1本の丸太に3日くらい向き合いながら加工していました。
製材した面に出てくる節を観察して立ち木の枝振りがひらめいた瞬間、板目にかけるカンナがひっかかって年輪が成長する様を意識した瞬間、冬目が水をはじく様子を見て、洗面周りの露しを全部冬目にすることをひらめいてしまった先輩の笑顔に立ち会えた瞬間、様々に木と会話する瞬間に満ち、没頭できた、ぜいたくな毎日でした。そして、親方からもらった叱咤激励。いい仕事だと、今でも思います。

 

質問8)今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?

まだまだ未熟ですが、「健全な森林の育成」という軸を大切に、この人なら安心して自分の山を預けられる。そう感じてもらえる森林技術者に近づきたいです。
林業のことはもちろん。植物や木材、木工や木造建築、そして木育など、森林にかかわることを学びたい人は、一度アカデミーを訪ねてみてください。きっと、森林にまつわるあれこれを、笑顔で学ぶ顔に出会えると思います。

 

文字の大きさを変更する
色を変更する