森と木のクリエーター科林業専攻
//2024/01/17

2 森林管理技術

エビデンスをもって多様な現場に応えられる力を身につける

森林管理技術は、職人技ではありません。きちんと説明できる科学技術です。これまでは、現場での経験知・暗黙知としての技術が各現場において引き継がれてきた部分もあるでしょう。しかし、これからの技術は、知識知・形式知として存在しなければなりませんし、ほとんどの部分でそれが可能です。

これからの森林管理では、どんな場面でもエビデンスに基づいた管理が必要となります。それを実現できる林業技術者の育成を目指した、いくつかの科目を紹介します。

 

樹木学実習/樹木学指導実習

林業技術者にとって、樹木が同定できることは必須の能力です。しかし、技術者としては単に多くの樹種を同定できるだけでは不十分です。その樹種がどんな生態的特性を持っているのか、またどんな利用特性を有しているのかという知識も不可欠です。さらに、どんな季節でも、どんな状態でも同定できることも大事なことです。

この科目は、以下を目標とするフィールド実習です。

  • 樹木がどんな場所で生きているのか、どんな成長の仕方をするのかを、現場における観察で実感し、自らの知見とする。
  • 葉に頼らず、樹形・枝ぶり・樹皮・冬芽などでも同定できるようになる。すなわち、遠くからでも、あるいは落葉期でも同定できるようになる。
  • 実生稚樹、若木、成木、老木、どんな成育段階でも同定できるようになる。

森林施業と森林生態

森林管理技術は科学技術です。森林管理技術は、樹木やその集団である森林の生き物としての営みに逆らわない、さらにはそれを利用することが大原則なのです。

千差万別、一つとして同じ現場がないと言ってもよい森林施業の現場で的確な判断をするには、現場で起きていることを適確にとらえ、将来を予測することが必要です。そのためには、過去から現在に至る過程を推測することも効果的なトレーニングになります。

この科目もフィールド実習で、以下を目標としています。

  • 樹木の種子散布様式や発芽特性と更新立地の関係を説明できるようになる。
  • 森林の撹乱と天然更新の関係を、具体例を挙げながら説明できるようになる。
  • 森林の発達、階層構造の発達や衰退を、光環境の変化と樹種特性を交えて説明できるようになる。

 

造林の基礎

この科目は、スギ・ヒノキ人工林施業を構成する各種の作業技術について、技術の根拠(技術を支える科学的知見/技術としての合理性など)を交えて講義します。また、各作業は独立したものではなく、施業の中で互いに関連し合っているということを強く意識し、総合的に最適なコストパフォーマンスを得るにはどうしたらよいのかも考えます。

この科目の目標は次のとおりです。

  • 造林樹種の選択方法を説明できるようになる。
  • 各種の作業の目的と具体的方法を説明できる。
  • 前作業と後作業の関係を説明できる。
  • 各作業の今日的課題を挙げ、その解決方法を考えることができるようになる。
  • 森林の気象害の発生要因・危険箇所・回避方法を説明できる。

 

多様な森林施業

森林施業とは、本来、自然環境や経営方針・経営戦略などに応じた多様なものです。その多様な施業を展開するには、相応の科学的な知識や造林学的な知識、合理的な思考能力を必要とします。だんだんと知見が蓄積してきた1年後期に開講されるこの科目では、以下のことを目標にしています。

目的とする機能に対する目標林型の考え方を説明できるようになる。

  • 皆伐一斉林施業の長所と短所を説明できる。
  • 択伐林施業の特質とそれが可能となる条件を説明できる。
  • 天然更新の可能性を判断できるようになる。
  • 広葉樹林を育成する留意点を述べられる。

 

森林施業演習

以上は全て1年生科目です。2年生では、1年時に学んだことの応用として、様々な施業の現場に触れることで、現場の状況を把握し、課題をみつけ、解決策を検討するのがこの科目です。以下、目標。

  • 施業現場を観察または調査し、その結果に基づいて現況を説明できるようになる。
  • 現況から、目的達成や目標到達の可能性を判定できるようになる。
  • 目的達成や目標到達のための解決策を具体的に提案できるようになる。

 

以上に掲げた各科目での目標は、「将来こんなことができる技術者になってほしい」という願いを込めたものです。各科目は、そのための基礎体力をつけるのが目的です。