森と木のクリエーター科林業専攻
卒業生の進路

森 日香留~現場の人を支える仕事~

プロフィール

森林文化アカデミー22期生 岐阜県出身

大学卒業後、地元企業で広報を担当。その後、森林文化アカデミーへ入学。現在は岐阜県林政部に所属し、飛騨地域の木材や特用林産物の流通に関わる行政の仕事に携わり、現場の声を制度づくりにつなげることを大切にしている。

 

質問1)今の仕事内容を教えてください

現在は飛騨地域の木材や特用林産物(きのこ原木など)の流通に関わる仕事をしています。主な業務は、岐阜県産材を活用する事業への補助金制度の運用です。また、飛騨地域の木材流通の実態を知るため、製材所への聞き取りや調査も行っています。

制度をつくるには、現場で何が起きているのかを知ることが大切だと考えています。事業者の想いを直接聞き、それを行政の制度にどう反映させるかを考えることが、この仕事だと感じています。

将来的には森林整備にも携わりたいという思いがありますが、木材の流通や利用まで幅広く学んだアカデミーでの経験が、今の仕事につながっていると感じています。

 

 

 

質問2)今の仕事で「やっててよかった」と感じることを教えてください

まだ2年目なので、大きな達成感を感じる場面はこれからだと思っています。

一方で、仕事とプライベートのメリハリをつけて働ける環境には魅力を感じています。休日には高山で開催される講座に参加したり、図書館で郷土史を読んだりして、飛騨という地域について学んでいます。

最近は車も購入したので、これからは飛騨の森林を巡るのが楽しみです。学生時代の樹木同定の実習のおかげで自然の見え方が大きく変わったのもあり、自分の住んでいる地域の様子を観察するのが楽しいです。

 

 

質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

正直に言うと、「自分の仕事が社会の役に立っている」と胸を張って言えるところまでは、まだたどり着いていません。日々、「この仕事にはどんな意味があるのだろう」と考えながら働いています。もともとは林業の現場で働きたいと思っていました。

しかし、現場で多くの人と出会う中で、技術や経験の豊かさに驚かされ、「こうした人たちを支える仕事も大切だ」と考えるようになりました。

今は、現場の課題を整理し、制度という形にして支えていくことが自分の役割だと思っています。まだ学ぶことばかりですが、少しずつ自分なりの貢献の形を見つけていきたいです。

 

質問4)森林文化アカデミーに入ったきっかけ

転職を考えていたときに森林文化アカデミーを知りました。

もともと林業に興味はありましたが、ただ作業をするのではなく、「なぜその仕事をするのか」を理解したうえで働きたいと思い、学校で学ぶことを選びました。

他の学校も検討しましたが、以前から岐阜に愛着があり、林業だけでなく木工など幅広く学べることにも魅力を感じ、森林文化アカデミーへの入学を決めました。

 

 質問5)アカデミーで得た学び

一番大きな学びは、「自分の目で見て、感じたことを大切にする」という姿勢です。

授業で学ぶ知識はもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。実際に現場へ行き、自分で見て考えることの大切さを学びました。

また、アカデミーには森林や木が好きな人たちが集まっています。同じ興味を持つ仲間と議論しながら学べたことも、とても貴重な経験でした。

学びに終わりはなく、社会に出てからこそ本当の学びが始まる。そのことを実感できた2年間でした。

 

 

 質問6)専門分野以外の授業やプロジェクトで、役に立った(印象に残っている)科目

「岐阜を知る」はとてもいい授業だったと思います。森と木に関わる様々な職を知り、またその中での人々のつながりを感じることができました。あとは製材の授業もよかったです。曲がりが大きいと何が起こるのか、実感をもって学べました。他にも、節について、材料という観点から話を聞けたのもよかったと思います。まとまった授業があってもいいと思います。また、ナタの柄を作る授業は、知らなかったのでとらなかったけどとればよかったです。

 

質問7)アカデミー入学前の仕事や家業など、バックグラウンドが活かされていると感じることがもしあれば。

これまでの経験は、すべて今の仕事につながっていると感じています。

大学では法学を学び、法令や制度を読み解く力が身につきました。現在の行政の仕事でも、その経験が役立っています。前職では岐阜県内の地場産業に関わり、広報の仕事をしていました。ものづくりの魅力を伝える仕事をしていましたが、次第に「伝えるだけでなく、作る人や支える人になりたい」と思うようになりました。

今は行政という立場で現場を支えていますが、これからも現場とのつながりを大切にしながら仕事を続けていきたいと思っています。

 

 

質問8)今の仕事をしていく上での「モットー」。これからこの道を目指す若者へのメッセージ

とにかく現場にいることを大事にしたいです。ただ、それは必ずしも「やらなければならない」と決まっている業務ではないため、理由付けをしたりするのに難儀しています。「やらなければならない」仕事以外をどう組み立てていくかは、その人のクリエーター気質にかかっています(あまりカタカナ語を使うのは好きではありませんが、クリエーター科なので、ここはあえて)。公務員の仕事は、とにかく説明責任を果たすことが重要なので、面倒ではありますが、大切なことだと思っています。きちんと説明することは、相手を尊重することだからです。

私たちの仕事って、いったい何なのだろう、とよく思います。人と森林とをつなぐ仕事のひとつなのだ、と今は思っています。森林環境教育に代表されるような、実体験を伴う森林との関わりは重要です。それと同時に、森林やそれに関わる仕事のことを、論理的に整理することも欠かせません。最終的に最も重要な、感覚的なことの後ろ盾として、私たち公の論理的な仕事があるのだと思います。そうであるからこそ、論理だけに偏ることなく、現場を訪れて自分の目で見、自分の耳で聞くことが、すべての前提にあるべきだと思っています。

この仕事への捉え方は、人それぞれです。特に定年を迎えられるあたりの世代は、激動の時代を、夢を掲げて最後まで勤め上げた、本当に格好いい人たちです。

一方で、それは私の道ではないな、とも思います。辛いこともあります。県職員でしょ、と強く当たられることもあります。前任や他部署のとばっちりを喰らうこともあります。かつて、重要なのはどんな “痛み” を引き受けるかだ、と言われ、なるほどと思ったことがあります。どんな選択をしても、ある程度の楽しみは見出せるので。どんな痛みを引き受け、その中で何をモットーとするのかは、それぞれが心の中に持っていればよいと思います。