井上 峻太郎~代々の山を、次の世代へつなぐ~

プロフィール
森林文化アカデミー18期生 埼玉県出身
大学卒業後、家業の森林・林業について学ぶため森林文化アカデミーへ入学。卒業後は兵庫県の製材所で森林管理や原木管理に携わった後、地元へ戻り家業を継ぐ。現在は所有林の管理を軸に、森林空間を活用したイベントや研修、木工房「木楽里」の運営など、地域の森林や資源を活かした活動に取り組んでいる。
質問1)今の仕事内容を教えてください
所有林を中心とした森林の管理をはじめ、その森林空間を活用したイベントや研修の企画、また「木楽里」という工房の運営もしています。最近は、森林だけでなく畑や空き家といった地域資源を活かし、地域のこれからの暮らしをつくっていくためのコミュニティ運営なども始めました。

質問2)今の仕事で「やっててよかった」と感じることを教えてください
100年以上、何代にも渡って育ててきた木が目に見える形になって使われた時や、それらの木が生えている山の気持ちよさを活かしたイベントができた時などに、「先人たちの苦労も報われる形で山を活かせて良かったな」と実感します。

質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?
首都圏近郊ということもあって年間を通じて多くの人を所有林にご案内する機会があり、林業という仕事やその課題について直接お伝えする場面が多々あります。そこでご案内した方の中から、継続的に森林に関わってくださる方も出てきています。地道ではありますが、現場で直接お話する機会をつくることで、森林の課題に向き合ってくれる人を少しでも増やすことには貢献できているのではないかと感じています。

質問4)森林文化アカデミーに入ったきっかけ
林業について幼い頃から身近でありながら本格的に勉強したことがなかったので、しっかりと学んでみたいと思ったのが一番の理由です。当時、アカデミーの先生の中に知り合いがいて、直接お話を聞く機会があったこともきっかけになりました。
質問5)アカデミーで得た学び
森林管理の知識から現場の技術まで広く深く学べました。また、授業や視察を通じてバリバリ活躍されているたくさんの方にお会いする機会があったので、一口に林業といっても様々な仕事の仕方があるんだな、と知ることができました。
楽しかったという意味で印象に残っているのは、野外でのフィールドワークです。先生方が生き物にとても詳しいので、樹木の同定はもちろん、森の生き物全般について学びになることが多かったです。年齢、経歴、専攻も異なる同期との交流もいい刺激になりました。

質問6)専門分野以外の授業やプロジェクトで、役に立った(印象に残っている)科目
木工のグリーンウッドワークを体験できて良かったです。実家の工房で木工に触れたことはありましたが、生木を削る体験は初めてでした。いわゆる「雑木」と一括りにされてしまうような木にもそれぞれ特徴があり、山で伐った木をそのまま手斧やナイフで削ることでスプーンなどの道具を作ることができる、という新しい発見がありました。
質問7)アカデミー入学前の仕事や家業など、バックグラウンドが活かされていると感じることがもしあれば。
幼少期から林業が身近にあったため、林業の課題や山間地域の暮らしについて肌感覚で理解していたことは強みでした。また、登山が好きで普段から体を動かしていたこともあり、体力面での不安が全くなかった点も活かされたと感じます。
ただ、子どもの頃に「実家の家業」として知っていたことと、実際に「実務」として携わることの間には大きなギャップがありました。アカデミーを卒業して現場に立ってみて、初めて気づく課題や改めて学びたくなることもたくさんありました。今振り返ると、入学前に少しだけ実務として家業に関わった上でアカデミーに入っていれば、さらに深い学びが得られたかもしれないと思うことがあります。

質問8)今の仕事をしていく上での「モットー」。これからこの道を目指す若者へのメッセージ
代々受け継いできた山を持ち、それを活かして生きていくことが「前向きで積極的な選択肢の1つ」になるようにしたい、ということです。山間地域での暮らしを、まずは自分自身が心から楽しむ(楽しめるような環境をつくる)ことを大切にしています。「山を引き継いでしまったからやらなければいけない」ではなく、「山を持っているからこそ豊かに暮らせる」と思える状態を目指しています。先人から預かった山林を自分自身が楽しみながら守り、次の世代へ豊かな状態でバトンを渡していきたいと考えています。
僕のように自ら山林を所有する林家として、(伐採作業等を受託するサービス業的なやり方ではなく)山を経営していくスタイルの林業を行う場合、伐採・搬出の効率性を極めることだけで生計を立てるのは難しいので、様々な工夫が求められます。
しかし、森や木を活かし、自然の中で豊かに暮らしていく方法を模索することは、非常にチャレンジングで面白いゲームのようなやりがいがあります。この地域でも一緒に挑戦してくれる仲間が増えてほしいですし、全国の様々な地域で同じような志を持つ方々と、山の暮らしや経営について情報交換ができたらとても嬉しいです。
