4 地域材活用
「地域材活用」森と繋がるもの作り
森林文化アカデミー木工専攻の大きな学びのテーマでもある「地域材活用」
これは今、山や森を抱える地域において、喫緊の課題となっています。
地域の山や森から得られる木材を始めとした多様な素材は、かつてはその地域の産業や生活の中で消費されてきました。木材は、工芸の材料や燃料として、その土地の気候や文化に根差した活用がされていたのです。しかし、そのような地域の森と人の暮らしが結びついていた時代はかつてのものとなり、放置されて荒廃した里山林が様々な形で人の生活に悪影響を及ぼしています。木材を活用するから森に人の手が入り、森が整備されるから有用な木材が手に入る。かつては当たり前のようだった循環が今ではとても難しいことになってきています。
森林文化アカデミーでは、1つの仮説として、小さな地域でも安価に導入できる「コンパクトな簡易製材機」。パッシブでローコストに、自然に対してもローインパクトに運用できる「太陽光木材乾燥設備」を活用することで、地域で伐採された樹木を自らの手で製材・乾燥してモノ作りに使う地域材活用のコンパクトモデルを検証しています。
現在木工専攻の学生が取り組む「広葉樹の簡易製材と木材乾燥」と「広葉樹林の保全と活用」という2つの実習は林業専攻と協働して、森づくりと木材活用を繋げた視点で地域材の活用に取り組んでいます。
この実習で学生は1本の木を山から木を伐り出すところから、その木でもの作りを行うところまでを体験します。学生達は、この実習を通して、木を安全に伐り、運び出すためにどのような技術が必要なのか。どのようにして、もの作りに使用できる材料を丸太から製材するのか。木を木材にしていく為に必要なひととおりのプロセスや知識について学びます。
近年、地域から減り続けている製材業ですが、この製材が地域内で実現できることで、これまで森に捨てられてきた丸太が、もの作りの材料として使えるようになります。また、自ら製材を行うことで、他の地域には無い、個性的な樹種がもの作りに使えるようになったり、一般の木材流通では手に入らないような厚みや寸法の板を入手できるようになるなど、これからもの作りを生業としていく上でアドバンテージとなるようなメリットが数多く得られることがわかってきました。

伐採した木を自ら製材する学生。このような製材機は軽自動車1台分くらいの価格で導入できる
今、森にある木を活用するために必要な技術である製材。
また、もの作りを続けていく為に必要な山づくり。
これらは、自然との共生と木工という産業を両立していく為に、切っても切れない関係があります。
特に伝統工芸に使われる材料などは、定期的に人の手が入る里山だからこそ、もの作りに適した材料が継続的に得られる仕組みが地域の文化としてでき上がっていました。いま、再び地域の木材を産業に活かすため。もの作りで地域の材に付加価値をつける1つの手段として、木材の製材や乾燥を自ら地域内で行うことができるというのが、作り手としての強みになってくると考えられます。
森林文化アカデミーの木工専攻のカリキュラムには、地域材を活用するための技術と森づくりの意識を持った作り手を育てるために、実際に森に足を運び、自ら木を伐り出してもの作りに活用する実習を行っています。