森と木のクリエーター科 木工専攻
//2024/01/17

2 幅広い木工

岐阜県に4校ある、木工系専門学校

岐阜県には木工系の専門学校が4つもあります。これは岐阜県が豊富な森林資源に恵まれ、木工の長い歴史を有することが背景にあります。

岐阜県立木工芸術スクール(高山市、1年制)
森林たくみ塾(高山市、2年制)
飛騨職人学舎(高山市、2年制)
④岐阜県立森林文化アカデミー(美濃市、2年制)

4校はそれぞれ教育内容に特色があり、人材目標も異なります。①は公立の職業訓練校、②はオークヴィレッジの系列校、③は飛騨産業の系列校、④は林業短期大学校が前身の公立の専門学校です。詳しくはそれぞれのウェブサイトなどを参照してください。4校では合同の学校説明会や合同授業を行うなど、交流もあります。

 

木工=家具製作、だけではない

上記の①、②、③の学校は、主に家具製作技術を教えています。これは産業規模の大きい木工分野が家具製造業であるためです。これに対して森林文化アカデミーでは、産業規模の小さい様々な木工分野を教育に採り入れています。

木工は技術で分けると、以下のような分野があります。
Ⓐ「指物」・・・板と板を組み合わせて作る
Ⓑ「挽物」・・・木の塊を回転させて削る
Ⓒ「刳物」・・・木の塊を刳って形を作る
Ⓓ「曲物」・・・薄い木の板を曲げて器を作る
Ⓔ「箍物」・・・細い木の板を箍で締めて器を作る
Ⓕ「編組物」・・・細いひごを編んで作る

Ⓐ「指物」がいわゆる家具製作です。森林文化アカデミーでは、1年次にテーブル、2年次に収納家具、椅子を作る実習があります。

収納家具製作の集合写真

 

Ⓑ「挽物」は、木の塊を木工旋盤という機械で回転させながら削り、器を作ることができます。少ない工程でダイレクトに製品が作れるため、趣味として楽しむ人が増えています。そのため森林文化アカデミーでは木工旋盤を実習に採り入れています。卒業生の中には指導者として活躍したり、器やスプーン作りを仕事にする人がいます。

木工旋盤で器を挽く

 

Ⓒ「刳物」は、木の塊から製品を削り出す、もっとも素朴な木工技術と言えます。1年次でスプーンを削る実習があるほか、2年次のグリーンウッドワークでは我谷盆というお盆を彫る実習があります。

我谷盆を彫る

 

Ⓓ「曲物」は、森林文化アカデミーでは高山市の伝統工芸士を講師に招き、曲げわっぱを作る実習を行っています。製作した曲げわっぱは、後で漆を塗り、自分で使います。卒業生の中には曲物工房を起業した人がいます。

曲げわっぱ

 

Ⓔ「箍物」は、桶や樽を作る技術のことです。アカデミーでは実習はありません。

Ⓕ「編組物」については、木工ではありませんが、竹林で竹を切り、ひごを作って籠を編む実習があります。森林文化アカデミー卒業生の竹細工職人が講師を務めています。

竹細工の実習

 

上記の①、②、③の学校がⒶ「指物」の技術を集中して学ぶのに対し、森林文化アカデミーが幅広い技術に触れるのは、森林資源の多様な活用方法を見つけてほしいためです。すべての技術に精通することはできませんが、一通り体験した後に自分に合った技術を選んで深められるよう、カリキュラムを組んでいます。

木工を学ぶのに恵まれた場所

岐阜県は木工を学ぶのに最も恵まれた場所の1つであると言えます。
まず、豊かな森林資源。飛騨地域には多種多様な広葉樹の資源があり、東濃地域には天然の木曽ヒノキをはじめとする針葉樹資源が豊富です。
また、中濃地域の岐阜市や各務原市には、全国有数の広葉樹市場があります。高値が期待される巨木や銘木は、全国から岐阜に集まってきます。森林文化アカデミーでは実習でこれらの市場を見学に出かけます。

木材市場

広葉樹については、高山市に広葉樹専門の製材所や乾燥施設があります。森林文化アカデミーでは、家具製作などの実習の際にこれらの事業所を訪れ、必要な材料を購入しています。

木工産業の盛んな高山市や中津川市をはじめとする岐阜県内には、上記のⒶ〜Ⓕのすべての木工事業所があります。見学やインターンシップに行くことも可能です。

製材所で材料選び

 

木工を志す人は、岐阜県の4校のうちいくつかを見学して、自分に合った学校を選ぶことをお勧めします。なお、Ⓑ「挽物」を専門的に学びたいなら石川県挽物轆轤技術研修所、Ⓕ「編組物」を専門的に学びたいなら、木工ではなく竹ですが大分県立竹工芸訓練センターという学校もあります。参考にしてください。