沿革と理念
岐阜県立森林文化アカデミーの歩み
岐阜県立森林文化アカデミーの前身は、1971(昭和46)年に開校した「岐阜県林業短期大学校」です。2年制の専門教育機関として、林業後継者や林材業技術者の育成を担い、30年余りの間に600人を超える卒業生を輩出してきました。彼らは主に岐阜県内で森林・林業分野の専門職として活躍しています。
時代の変化とともに、地域が求める人材像は林業技術者にとどまらず、森林を活かした地域経営、建築、ものづくり、教育、暮らしのデザインへと広がってきました。こうした新たな要請を受けて、2001(平成13)年、日本初の森林を学ぶ高等教育機関として「岐阜県立森林文化アカデミー」が誕生しました。
森林文化アカデミーの理念
21世紀に私たちが直面している課題は、地球環境の持続可能性そのものです。気候変動、生物多様性の喪失、水資源の枯渇、エネルギーや食糧の不安定化など、いずれも森林と密接に関わっています。
このような背景のもと、森林文化アカデミーは、「森林と人との共生」を基本理念に、森林の可能性を「科学(Science)」と「文化(Culture)」の両面から探究し、社会課題を解決し、自然の循環と一体となった持続可能な社会を築くことのできる人材を育てることを使命としています。
その根底には「森林文化」という考え方があります。わたしたちは森林を単なる資源とするのではなく、人類が自然とともにある暮らしを再構築するための倫理観と文明観として再定義し、教育・研究・実践を通じて地域からグローバルへとつなぐ役割を果たします。
森林はCO₂吸収や生物多様性の保全、水源涵養といった地球規模の機能を果たす一方で、中山間地域の農林業や木材産業など地域経済の基盤であり、災害の緩衝帯としても機能しています。
森林が持つ多様な価値を、知識・技術・空間・文化のすべてのレベルで顕在化させ、循環型社会の構築に活かす。わたしたちはこの考え方を、NbS(Nature-based Solutions: 自然に根ざした社会課題の解決策)のnature(自然)をforest(森林)に読み替えた「FbS(Forest-based Solutions)」と呼び、掲げています。
岐阜の地から未来へ
日本は国土の約7割を森林が占める“森の国”です。その中でも岐阜県は森林率81%以上を誇り、山間部の暮らしや祭礼、匠の技といった、森林とともに生きる文化が今なお息づいています。しかし戦後の燃料革命、輸入材の増加、山村の過疎化などにより、森林の価値は見えにくくなり、地域の持続性も脅かされています。
森林文化アカデミーは、こうした課題に対し、「現地現物主義」に基づく教育・研究を重ねながら、その知見と技術を広く社会へ発信する実践的な高等教育機関です。SDGsやプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)といった世界的課題とつながりながら、ローカルからグローバルへの展開を視野に、森林から持続可能な未来を切り拓くための、理論知と実践知を養っています。
激動する未来を見据えた「森林文化アカデミービジョン2040」
開学から20数年の間に、わたしたちを取り巻く環境は大きく変わりました。科学技術の急速な発展、地球温暖化の深刻化、甚大な自然災害など、これからより良い社会をつくる人材育成機関が対峙するべき事象は、かつてないスピードで現出しています。
森林を基盤とした目指すべき未来の姿を改めて再定義し、広く共有していくため、わたしたちは24年にわたる現場での実績をもとに2040年を見据えた「森林文化宣言」および「森林文化アカデミービジョン2040」を公開しました。
誰もが森とともに学ぶ場へ
「一隅を照らす」。足元から世界を照らす人材を育てること。森林文化アカデミーは、専門職養成の学校であると同時に、すべての人に開かれた「生涯学習の拠点」でもあり、「専門技術者のさらなるスキルアップの場」でもあります。地域の森林を深く理解し、文化を受け継ぎ、良き未来をつくる意志をもつ人々——年齢や背景を問わず、森を学び、森とともに生きる道、すなわち「FbS」を実践する人を歓迎します。わたしたちは、岐阜から始まる新しい森林文化を信じて、教育・研究・実践を続けていきます。
森林文化アカデミーの3つのポリシー
学校評価について
本アカデミーでは、学校教育法第42条、同施行規則第66条、及び準用規定である学校教育法第133条、同施行規則第189条に基づく学校評価を行なっています。
令和6年度における本校の取り組みを自己評価報告書としてまとめました。
令和6年度の自己評価に基づき学校関係者から頂いたご意見・評価を取りまとめました。