教員紹介
たまき いちろう

玉木 一郎

准教授
ichiro@forest.ac.jp https://sites.google.com/site/drichirotamakispage/
専門分野 森林生態学・分子生態学・集団遺伝学
最終学歴 名古屋大学大学院 生命農学研究科 博士課程後期課程
研究テーマ 植物の種間交雑や遺伝的構造に関する研究,樹木の更新に関する研究,植物の過去の集団動態や遺伝的多様性の将来予測に関する研究,希少樹木の保全に関する研究

経歴

わりと自然が身近な環境で生まれ育ったせいか,幼い頃より森林や生物に興味を持っていました。高校のころは昆虫採集に没頭していたため,大学では昆虫のことを研究したいと思い,名古屋大学の農学部に進学しました。

しかし,大学で専門科目を学ぶうちに,植物の面白み(固着性や自殖,クローンなど…)を知り,植物の中でも特に森林を構成する樹木の生態に興味をいだくようになり,森林生態生理学研究室に行きました。卒業研究では樹木の群集構造をテーマに扱いました(玉木ら 2005)。

大学院に進学後は,当時流行であった分子マーカ(遺伝子型情報)を使った研究がしたいと思い,東海地方の希少樹木シデコブシを対象に保全遺伝学的研究に取り組みました (e.g. Tamaki et al. 2008; 2009a; 2009b)。途中で紆余曲折があったものの,2009年に学位を取得することができました。その後,半年ほどPDをして,現職に至ります。

学位取得後は,シデコブシの保全に関する研究も続けていますが,同種の近縁種であるタムシバとの自然種間交雑の研究に大学の後輩らとともに取り組みました (Muranishi et al. 2013)。またその他にも,ナラ・カシ類の種間交雑や遺伝的多様性に関する研究にも取り組んでいます。現在の興味に関するキーワードには「種間交雑」や「遺伝子流動」,「希少種の遺伝的多様性」,「将来予測」,「過去の集団動態」などがあげられます。

(経歴のエピソードを20周年記念インタビュー記事で公開しています!)

専門分野に対する思い

各個体が持つ遺伝子型情報には,それらの個体からなる集団や種が,どのような歴史をたどり現在に至ったのかということに関する痕跡が残されています。その痕跡から,種間の関係や種内の地域間や集団間の関係を明らかにすることができます。これらの情報は地域性種苗をつくる際の判断基準に利用することができます。

また,希少種の集団は閉じた系であることが多いため,現在の集団内の遺伝子型情報から将来の状態を予測することができます。異なる保全プランに基づくシナリオの将来の状態を比較することで,どのプランを取るべきか検討することができます。

私の行っている研究はこのように地域の資源を利用・保全する際に役立てることができますが,その他にも単純に生物学的な面白さという観点からも捉えることが できます。目の前にいる樹木が,どんな歴史をたどり,現在そこに立っているのか?そして現在まわりの種とどんな関係にあり,どんなくらしをしているのか?という話にはとてもロマンがあると思いませんか? 授業や生涯学習講座では,樹木の生態学的な面白みを学生や参加者に伝えるようにしています。