岐阜県揖斐川町春日地区のチャノキ地域栽培系統の遺伝的多様性に関する研究

140429kasuga現在,お茶の栽培では80%がヤブキタと呼ばれる品種で占められています。また,その他の品種も含めるとお茶栽培に占めるクローン品種の割合は92%以上であるとされています。チャノキは自家不和合性のため,種子による繁殖を行うためには他殖を行う必要があります。古くから栽培されている地域栽培系統は種子で増やされているため,遺伝的多様性を保持しています。本研究では岐阜県揖斐川町春日地区で古くから栽培されているチャノキの遺伝的多様性を調査しました。春日地区では急斜面にお茶が栽培されており,亀の甲羅状に刈り込まれた美しい景観が広がっています。

春日地区で地域栽培系統が栽培されている10集落のほぼ全てのお茶畑をまわり,各畑から1個体のサンプルを採取し,全169個体の遺伝子型を調べたところ,全て異なる遺伝子型を示しました。当初,集落間で遺伝的に分化しているのではないかと予想していましたが,結果では集落間の分化は見られず,春日地区全体で一つの大きな集団であることが分かりました。

春日の遺伝的多様性を既往の論文にある京都の地域栽培系統や中国のデータと比較してみると,京都とはほぼ同程度,中国に比べるとずいぶん低いことが分かりました。

お茶は9-12世紀頃に中国から仏僧により持ち込まれたという記録が文献にあります。春日地区のチャノキ集団の遺伝データから過去の集団動態を推定してみると,約1000年前に集団サイズが激減し,その後徐々に拡大したが,現在の集団サイズは過去の大きさまでは回復していない,という結果が得られました。過去に中国から日本に持ち込まれたという文献の記録を支持する興味深い結果です。

この研究を以下の論文にまとめました。

  • Tamaki I, Kuze T, Hirota K, Mizuno M (in press) Genetic variation and population demography of the landrace population of Camellia sinensis in Kasuga, Gifu Prefecture, Japan. Genetic Resources and Crop Evolution LINK