カミノハウス

築140年近い小屋を住まいとして再生しました。小さく豊かに暮らしながら、地域活性化を見据えた暮らしを考えています。(岐阜県関市)

建築研究所すまいづくり表彰 地域住宅奨励賞「カミノハウス」(建築研究所)2015年
日本エコハウス大賞 リフォーム特別賞(建築知識ビルダーズ)2015年

2014カミノハウス_R

カミノハウス プレゼンボード

地域性への配慮事項

岐阜県関市神野地区。100年前から、ほとんど変わらない田園風景を残す地域に建つ約20坪の古い小さな空き家。この130年余りの歴史を刻んだ小さな家を購入し、佇まいをそのままに各種性能と暮らし向上改修を行った。このような自然豊かな土地でも、新たに住宅が建設され、それに合わせるかのように持ち主のいなくなった空き家が増えている。空き家増加に伴い治安の悪化や、自治体の健全な運営が立ち行かなくなることが懸念される。

今回、改修履歴をひも解き、規模はそのままに地域素材や自然素材を用いて必要最小限の改修を行った。小さく暮らすことで敷地にゆとりが生まれ、豊かな自然環境との関係が得られ、暮らしの豊かさにつながる。

また、同市には3つの温泉といくつかの銭湯が残り、現在も地域住民の憩いの場となっている。今回の改修では、浴室は取り除き簡易シャワーのみとし、週の半分は地域資源である外湯の活用を考えた。

引っ越し後約一年が経過し、暮らしながら住まい手自身による改修が加えられ、家への愛着と地域へ定着が促され、百年後も豊かな街並みの佇まいを残すことが期待できる。

このように、空き家を改修・活用し、必要十分な規模で暮らすことで、地域景観の維持・向上や自治会の若返り、自治体の活性化のモデルを構築することがねらいである。

作品の概要

□設計者:辻充孝(岐阜県立森林文化アカデミー)

□施工者:T-PLAN建築工房

□計画概要

・計 画 地:岐阜県関市(省エネ地域:5地域)

・敷地面積:2786.25㎡(842.84坪)

・延床面積: 68.48㎡(20.75坪)増築なし

・構造階数:木造平屋建て

・断熱性能:改修前UA値:3.47W/㎡K

⇒改修後UA値:0.84W/㎡K(413%アップ)

・日射熱取得:改修前ηA値:8.9

⇒改修後ηA値2.9(307%アップ)

・1次エネルギー消費量:改修前387.7GJ

⇒改修後54.3GJ(714%アップ)

省エネ基準は全て(断熱、日射遮蔽、エネ)クリア

 

作品の特徴

建物の面影を残したまま、耐震、劣化対策、省エネ、温熱など建物の基本性能を向上させ、さらに住まい手によるDIYや、暮らしの様々な工夫で、省エネで心地よい豊かな暮らしを実践している。竣工後、住みながら行った主な取り組みとして、

・暖房:薪ストーブの設置・活用、ダブルハニカムスクリーンによる断熱強化、冬期に網戸取り外して日射取得アップ、縁側を断熱区画ゾーンに設定

・冷房:全窓にすだれ設置し日射遮蔽、網戸取付による通風利用、DCモーター天井扇ゆらぎ気流

・換気:風量調整機設置で料理別に風量調整

・給湯:真空管太陽熱温水器をエコジョーズに接続し各給湯に活用、最寄りの温泉や銭湯活用

・照明:太陽光発電外部照明設置、照明のLED化

・家電:不要家電処分、電力見える化

・調理:薪ストーブ活用、保温調理活用

・その他:0.3kW太陽光発電+蓄電池で日常の補助電源と非常用電源確保、手押井戸ポンプ、薪ストック

住まい手自身が手を加えていくことで、暮らしやすさの向上に加え、家に愛着がわき、外構も含めた整備によって、より地域に溶け込んだ住まいとなっていく。