木工専攻
卒業生の進路

小野 敦

里山の木を使ったものづくり,グリーンウッドワークを伝えるNPO代表

プロフィール

1968年 生まれ NPO法人 グリーンウッドワーク協会 代表

愛知県の濃尾平野のどまんなか出身。前職は製鉄会社で,主にプラント建設工事をしていました。2008年にアカデミーに入学し,里山と木工の基礎を学びました。学生時代から同NPO代表を務め,現在に至る。趣味は旅行とプラモデルづくり。


質問1)今の仕事内容を教えてください。

主にグリーンウッドワークの講座の運営と森づくりをしています。講座の運営では,生木の木工教室を月に4回,その他にいすやスプーンづくりの講座を年に数回開催しています。外部団体に呼ばれて出張講座をすることもあります。
森づくりでは,NPOのある美濃市内の里山林や郡上市白鳥のブナ林をフィールドにしています。ここから材料を調達することもあります。美濃市での「ろうきん森の学校」では,里山づくりとものづくりを融合させた木育講座を行っています。
だいたいの土日はこれらの活動のどれかを実施しています。平日は事務作業や刃物研ぎ,材料の調達などの下準備を行っています。

DSCF1100質問2)今の仕事のなかで「キツいな~」と思うことと,やりがいに感じることを教えて下さい。

講座ではメンバーに手伝ってもらうこともありますが,その前の下準備から広報までを全部一人でやらないといけないのが大変ですね。でも,講座で作品が完成した時のみんなの笑顔を見るとそんな疲れも吹っとびます。

質問3)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

毎回,グリーンウッドワークの講座にはたくさんの人が参加 してくれています。その中には遠く神奈川や兵庫から来てくれる人もいて,それくらいやりたいという思いの人がたくさんいるんです。忙しい現代人にやすらぎ の場を提供できるグリーンウッドワークが,今まさに求められているんだなと実感します。
また,伐った木を薪や炭ではなく,そのままものづくりに使えるというのは森づくりの視点からも新鮮で,森づくり団体にグリーンウッドワークの技術を提供するのも木育の一つとして大事なことだと考えています。

質問4)森林文化アカデミーに入ったきっかけは?

きっかけは大量消費社会に疑問をいだき,里山に興味を持ったことです。樹木医になりたくてアカデミーの門をたたきました。オープンキャンパスで個性豊かな先生たちに会って,面白そうだなと思ったのも入学を決めた理由の一つです。

質問5)アカデミーで得た学びは何ですか?

1年次には里山の自然の成り立ちと利用について,2年次には木工の基礎について学びました。1年次に先生が時間を調整してくれて,環境教育の授業を受けることができたことが大きな学びにつながったと思っています。
また,1年次の韓国・中国での植生の見学や,2年次のアメリカでのグリーンウッドワーク第一人者のもとでの研修といったグローバル体験も今の仕事に影響を与えていると思います。

質問6)自分の専門分野の授業以外で役に立った科目,プロジェクト,活動

自分の出身分野は建築なので,それ以外のこと全てが新鮮に目に映りました。エンジニア科の学生らと行ったチェンソーを使った林の手入れの実習は良い経験になりました。

DSCF1107質問7)アカデミー入学前の仕事や家族など,バックグラウンドが活かされていると感じたことがもしあれば、教えてください。

前職の現場監督の仕事での,マネージメント能力や人付き合いの経験が,現在のNPOの運営に活きていると感じています。また家族の協力で工房が運営できていることにも感謝しています。

質問8)山にある木を伐ってきて自分の手でものをつくるグリーンウッドワークは,里山利用の一つの形です。昔は当たり前だった利用方法を現代に取り戻し,山のめぐみを使い尽くしたい!


主査からのコメント

里山の知識と木工の技術を組み合わせたグリーンウッドワークによる起業は、もっとも森林文化アカデミーの卒業生らしい活動と言えるのではないでしょうか。アカデミーの地元・美濃市で起業してくれているので、卒業生たちと連携しながら、多様な活動に広がっていくことを期待しています。いずれはたくさん後輩たちを雇って欲しいですね!