木工専攻
卒業生の進路

多和 寛

最後の職人から技術を受け継ぎ、新しい和傘づくりを目指す

OLYMPUS DIGITAL CAMERAプロフィール

1974年生まれ
長屋木工所(岐阜県岐南町)勤務

精密機械メーカーで業務用映像機器の基板・機構の設計を経て、2013年に森林文化アカデミー入学。
2015年より、和傘の「ロクロ」と呼ばれる部品を作る全国で唯一の木工所に入り、師匠の長屋一男さん(写真右)のもとで技術を受け継いでいる。


7955312380_2d704a1497_oQ1:今の仕事内容を教えてください。

岐阜市が日本一の生産量を誇る和傘の「傘ロクロ」と呼ばれる部品を作っています。他にひな人形のぼんぼりの台なども制作しています。長屋木工所では週3日雇用ですが、残りの2日も工房に出て、自分で和傘の骨づくりを研究しています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAQ2:今の仕事でキツイなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください。

基本的に立ち仕事で、1日ずっと立っていることが多いので、体力的にはきついですね。ぼんぼりの台の制作では、材料の荒挽き(荒く丸い形に削ること)を1日で千個やることもあります。
千個と言っても、ひとつひとつ木材の状態が異なります。その違いを楽しみながら作業をしています。純粋に物を作っているのが楽しいし、単純作業ですが苦にはなりません。

Q3:今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

和傘の傘ロクロにしても、ぼんぼりの台にしても、今の仕事は製品の部品を作る下請けの仕事です。求められるものに応えて物を作るということです。ただ4月から働き始めたばかりで、自分が手がけたものが世に出たわけではないので、まだ貢献していると感じることはありません。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAQ4:森林文化アカデミーに入ったきっかけは?

東京でエンジニアの仕事をしていた当時、木工に興味を持ってアカデミーの「グリーンウッドワークの椅子づくり講座」に参加したのがきっかけです。その時、傘ロクロに欠かせないエゴノキを収穫する人がいなくなり、傘ロクロを作る職人さんも全国に1人しかいないことを聞きました。その後エゴノキをみんなで収穫する「エゴノキプロジェクト」のイベントに参加して、会社を辞めて和傘の部品づくりに携わることを決め、まず木工技術を習得するために森林文化アカデミーに入学しました。

Q5:アカデミーで得た学びは何ですか?

木工の基本的な知識と技術を、2年間で習得することができました。
学びではありませんが、初めてアカデミーを訪ねた時に長良川を見て、こんなにきれいな川があるのかと驚きました。それまではずっと都会暮らしだったので、見たことがありませんでした。空の広さや土の匂いなど、都会にはない美しい自然環境で学べたことは大きかったです。

image-1Q6:専門分野以外の授業やプロジェクトで、役に立ったものはありますか?

エゴノキプロジェクト」は、将来自分が仕事で使う材料を収穫するものなので、2年間とも参加しました。また、「樹木同定実習」ではさまざまな樹木の種類を見分けるポイントを学びましたが、実際に山に入って実物を見ながら教えてもらえるのが良かったです。木の種類を見分ける力は、いずれ仕事で役に立つと思います。

Q7:アカデミー入学前の仕事が、今に活きていると感じることはありますか?

小さな会社なので物を作っているだけという訳ではなく、和傘屋さんへの営業など、いろいろな仕事があります。職人とはいえ、社会人経験を経てから入って良かったと思います。仕事は段取りが大切ですが、それはどの職業でも共通です。
また、これまで機械設計の仕事をしていたので、和傘づくりの機械の構造などに課題を感じることもあります。いずれ自分なりの設計も採り入れていきたいと思います。

Q8:今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?

機械のセッティングなどはまだまだ時間がかかり、師匠のスピードには追いつきません。なるべく早く仕事に慣れ、技術を継承できるようにしたいと思います。それにはもっと数をこなすことだと思います。和傘は需要が減っていて、昔の職人さんほど数を作ることはできませんが、和傘の魅力を発信すれば需要はもっと増やせると思っています。
10年以内には、私の次に技術を受け継いでくれる人を見つけ、バトンを渡していきたいと思っています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA課題研究担当教員より・・・

最後の職人の後継者が必要という時に出会い、仕事を辞めてアカデミーに飛び込んできてくれました。安定した収入が約束された仕事ではないにも関わらず、一度もぶれずに和傘部品職人を目指して技術習得に取り組み続けたことには敬服しています。師匠の長屋一男さんも弟子ができて笑顔がのぞくようになりました。和傘職人さんたちと共に、より美しく精度の高い和傘づくりに取り組んでほしいと思います。(准教授・久津輪 雅)

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