熊崎 孝典(くまざき たかのり)

プロフィール

岐阜県下呂市小坂町出身 1962年生まれ

IT系企業でネットワークインフラ設計や自治体クラウドの設計・運用などに関わる。

54歳の時、故郷飛騨小坂を盛り上げたいと思い、飛騨小坂まちおこし映画をプロデュース。地元の女子高生に監督を、地元住民に出演をお願いし、クラウドファンディングで資金を集め映画制作を行った。

56歳で早期退職し、2019年森林文化アカデミーに入学。森林環境教育を学ぶ。

卒業後は、高山市教育委員会でICT支援員となり小学校や教育研究所のサポートを行っていたが、下呂市から声がかかり、2022年から下呂市デジタル課長となり、現在に至る。

 

質問1 アカデミーに入学したキッカケは?

「どんぶり会館のパンフレット」

土岐の道の駅「どんぶり会館」で岐阜県立森林文化アカデミーのパンフレットを見つけて、岐阜県にこんな面白そうな学校があるのか!と驚き、「こんな学校に行ってみたい❗️」と思ったのが最初。

その後故郷のまちおこし映画の制作に関わり、地域のために何かしたいという思いが募った。

過去に林業で栄えた故郷で活動するためには、山や木のことを勉強しなければ、

という単純な発想と、森林文化アカデミーのカリキュラムに魅力を感じたことで、

卒業後に故郷に資するための関り方を学べそうだし、教員含めいろいろな方との人脈づくりができそうだと感じた。

当時の仕事は、やりたい事や、できることはほぼやりつくした感もあったため、早期退職してアカデミーに入学した。

 

質問2 アカデミーの学生生活で印象に残ったことは?

「贅沢極まりない、学べる環境」

とても自由であること。他の専攻の授業も時間さえ調整出来れば受けられることに驚いた。

単位をとらなきゃ、ではなく、自分で学びたいことが自由に学べる環境が整っていること、学生室があり、一人一人自分の机があり、24時間365日(ただし年末年始を除く)いつでも学べる環境が整っているのは、すごいことだと思った。

また、いろいろな分野で専門性の高い教員がそろっていて、自分の専攻でなくても気軽にいろいろ相談したり、放課後であっても教えをいただけるので、サポートも万全❗️貪欲に学ぶことができた。土日もほとんど学校に来てたし、毎日21時頃まで学校にいたと思う。家に帰るのが勿体無いと思ってた。

   

 

質問3 今の仕事を選んだ理由、今の仕事のやりがい?

「小学校のICT支援員から、デジタル課長に転身」

アカデミー卒業後は、森林サービスや観光サービスに関わる仕事をと考えていたが、コロナ渦ということもあり、新しいことを始めるにはリスクが大きいと感じ、とりあえず高山市教育委員会がGIGAスクールの開始に伴いICT支援員を募集していたことから採用していただき、2つの小学校と教育研究所をサポートしていたところ、下呂市から声がかかり、任用職員として5年契約で採用ていただき、現在に至る。

 

(小学校図書館の司書の方の協力で作成した、子供たちへの挑戦状)

                                       

 

コロナ渦を経て、いま全国的に市町村ではDXの推進を旗印にテレワークの推進や対住民向けには「行かない・書かない」をスローガンに、ネットで行政手続きを完結できるような仕組みづくりを進めている。

そのためにはデジタル技術が必須であることから、前職の技術や経験を活かして、今までのやり方を見直し、新たな事業を企画・推進する仕事をさせていただいている。

具体的には、スマホで戸籍や住民票、税証明などが申請できる電子申請や、郵便に代わるデジタル通知の推進、「下呂デジポイント」という地域通貨の導入などを進めてきた。令和5年度は、デジタル通知に協力頂ける市民には下呂デジポイント5000円分を提供したり、子育て世帯には0〜18才まで1人10000円分の下呂デジポイントを給付したりしている。

仕事環境もインターネット接続を前提としたクラウドシフトの方針を企画して事業として認められたことで、ペーパーレス化と合わせ、いつでもどこでも仕事ができる環境構築を進めている。

前職もITの最先端の仕事をしていたが、インフラが中心で基本的にバックヤードの仕事だったことから、職員はもちろん議員や市民や市内事業まで巻き込んで利用してもらうサービスを考え推進するのは、とても面白くやりがいを感じている。

         

    (会議中)

 

質問4 アカデミーの学びで役に立っていることは?

「森林環境教育ならでは、多様な世代との関わりと学び」

アカデミーには、いろんな世代の様々な背景を持つ人が入学してきている。私の同級生も、10代〜50代まで各年代がそろっており、それがフラットな関係で付き合えるのは、なかなかできない貴重な経験であり、実に新鮮で楽しくわくわくしながら学生生活を楽しんだ。

その中でいろいろな経験を積み学びを得たが、特に印象的だったのは、アカデミーに入学して最初に行われるチームビルディング。

新入生同士がいろいろな体験を通じて2日間を過ごすというものだが、その場づくり素晴らしい。

最初に自分で呼んで欲しいニックネームをガムテープに書いて胸に貼いて、輪になって簡単な自己紹介をした後、ボールを渡され「◯◯(呼び捨て)」とニックネームで呼んで相手にボールを投げる。受け取った相手は投げ手に「ありがとう、◯◯」といい、他の人にボールを渡す、というものだが、これを繰り返すだけで、物覚えの悪い私でも顔と名前が早く一致することができた。

その後もグループに分かれて森林環境教育的なゲームを行ったり、宿泊先で夕食や朝食を作ったり、ラフティングなど普段経験出来ない体験を行う。

このたった2日間の授業により同級生同士の繋がりが深まり、とても仲良くなるのだ。

そして、卒業後もニックネームでお互いを呼び合うことになる。

その一方で、小学校の現場ではあだ名は禁止され、名前をさん付けで呼ぶことが義務付けられている。

社会でもハラスメント防止の観点から、さん付けを推奨している企業も多くなっている。

市役所内は同じ苗字の職員が多いため下の名前で呼ぶことが多い。

若い女性を「◯◯ちゃん」と下の名前で呼びあうのはけしらん、という市民も稀にいる。

敬意を払っているか悪意をもっているかの違いだけなので、どっちでも良いはずなのだが、面倒で悩ましい問題だ。

相手の呼び方はともかく、このチームビルディングは、下呂市でも実施すべきだと思い提案したが採用してもらえていないのは残念だ。

          森林環境教育では、多くの子どもたちを集めて「もりもりキャンプ」という2泊3日のキャンプが夏と冬に行われる。

このキャンプでは事前に子供たちがやりたいことのアンケートをとり、それを全部実現させることが1つのミッションになる。

学生から選出されたキャンプリーダーを中心に、クリエイター科とエンジニア科の多くの学生が関わって企画から運用のすべてを取り仕切る。社会人経験のあるクリエイター科の学生と、高校を卒業したばかりのエンジニア科の学生が、役割による上下関係・ヒエラルキーの無いフラットな関係の中で、気兼ねなしに色々意見を出し合いながら、その時のリーダーの考え方や進め方を尊重し受け入れながら進める。

毎年実施しているので、手順とかマニュアルとか用意してその通りにやらせれば簡単だと思うのだが、そういったものは一切ない。毎回毎回リーダ一は1から自分で考えて行い、色々失敗しながら周りのフォローに助けられる。それが気付きとなり経験が深まるのだ。

キャンプが始まると、学生たちはバディという役割をもらう。

私は2人の小学生を見守る役割を与えられた。

私自身の子供たちは当時既に30歳近くなっており、小学生との直接コミュニケーションするのは実に久しぶりだし、しかも他人の子だ。

気を遣いながら、コミュニケーションしながら信頼関係を作っていかなければならない。

子供たちのやることにいちいち口を出さず、やりたいことを自由にやらせる。それを危険が及ばないよう注意しながら見守る。

結果はできたかどうかよりも、子供たちの満足度が重要。

この経験は、管理職という今の仕事に随分生かされていると思う。

 

   (もりもりキャンプの学生スタッフたちと)

 

質問5 今の仕事で意識していること

「アカデミーで培ったマネジメント力」

部下たちにはいちいち細かい指図せず、信頼して自分のやりたいことをやってもらうための環境作りに専念して見守るようにしている。ただ、仕事なので、やりたい事ばかりでも無いのかも知れないが、少し高めの具体的な目標を設定してもらい、それに向けて頑張ってもらっている。達成すればそれが評価につながり、ボーナスにも影響するから、やり甲斐にも繋がると思う。

もちろん、部下が困っているときにはフォローするのだが、私がフォローしてもらうことの方が圧倒的に多い。幸いめちゃくちゃ優秀な部下たちに恵まれているのだ。

「越境体験という学び」

今越境体験を進めている企業が増えてきている。

自分が現在勤めている会社を離れ、まったく異なる環境でいろいろな経験を積むことで、新たな視点で新しいことに取り組める人材を育てるためだ。越境しないと出世できない大企業も出てきた。

そんな意識は全く無くアカデミーに入学したのだが、偶然にも私自身が越境体験をすることができたことで、視野を広げることができたと思う。

市の仕事は実に範囲が広い。いろいろな事業とITをキッカケで各部署と横断的に関わる仕事をしているが、森林文化アカデミーで培った学びや経験がとても役に立っていると感じている。

 

質問6 学生に向けてのメッセージ

「やりたい事、やった事ないことをやり尽くそう」

2年間はとても短い。

専攻や単位に囚われらず、とにかくいろんなことに首を突っ込んで学ぶことを勧めたい。それが許される学校だからだ。

森林文化アカデミーに入学して、資格をとるとか職人になるとかその為の学校では無いことを強く感じた。

多少技術も磨くが、それより広い範囲で知識やいろいろな経験を積んで、自分自身の特性とか可能性を見つけ、将来の方向性を再度見直したり、将来のため色々な人脈を築いたり、いろんなことを試すことの方が重要だと思う。

それを人的にも環境的にも応援してくれる稀有な学校だからだ。

 

       

(2020年翔楓祭記念撮影)

 

「翔楓祭は社会実験の場だ」

また、翔楓祭(学園祭)は自分を試す絶好の機会である。

個人事業主として生計を立てたいと考えるなら、学校の資源や他の学生を巻き込んでいろいろな社会実験ができるから、積極的に取り組まなきゃ損だ。ちょうどオープンキャンパスも同時開催しているので、次年度入学する学生へのアピールにもなる。

私は2年生の時実行委員長に選出されたので、いかに学生たちを巻き込んで、やる気を出させるかを考えた。それは、1年生の時とても残念な思いをしたからだ。

コロナ禍だったが、野外でのイベントだったことや学校の理解もあり実施できた。実行委員会を立ち上げ毎週水曜日の放課後に集まって進捗管理やお悩み相談を行った。基本的に学生たちがやりたいことを実現することが目的だ。

私が秀逸だと思ったのは卒業生の集まる場を作ってくれたことと、それまで何年も途絶えていた「こだまり」を復活させたこと。ぎりぎりになって企画を思いつき、数日で一気に仕上げた。

そうした活動をしていると、不思議と周りが巻き込まれてくれる。美濃市の広報で宣伝(前年までは無かった)していだだいたり、地元の保育園が参加してくださったり、他のイベントが全滅だったことも幸いし、過去最高の1000人を超える来場者数となった。

学生たちは、周囲や来客を気にしながら、駐車場整理で人が足りないと感じれば、手の空いていそうな学生に声をかけて対応したり、受付で渡す小径木の輪切りのワッペンをぶら下げていない客には声をかけて受付(検温含む)してもらったり、こちらから何も言わなくても、どんどん自ら行動してくれた。

翔楓祭を通じて後輩たちとの交流が深まり、クリエイター科とエンジニア科の交流もできて良かった。まさにこれこそチームビルディングやキャンプの経験が生きた結果だと思う。

企画、演出、プロモーション、運用、全体マネジメントなど、社会に出たらまず出来ない(やらせてっもらえない)、ことを経験できる。失敗しても良いから思い切ってじぶんのやりたいことをやって欲しい。私は実行委員長をやりながら、音楽イベント、知人の図鑑などの挿絵画家の原画の展示を行ったり、森林環境教育を志すものに見て欲しい映画上映も行った。ちなみに、映画上映は観客数10人程度で大失敗だった。

「チャレンジ、チャレンジ」

学生だから許されることもある。それに甘えて、それまで経験できなかった思い切ったことにチャレンジして欲しいと思う。

既に森林文化アカデミーに入学するという大きなチャレンジをしているのだから。