木工専攻
卒業生の進路

草刈 万里子

林野庁からアカデミーへ 身近な森を利用する楽しみを広める

草刈万里子さん

プロフィール

2015年にアカデミーに入学し、ものづくり講座を専攻。アカデミーを卒業後、入学前の勤務地であった北海道に戻りました。祖母亡き後に空き家になっていた函館のおばあちゃんの家に住み、週に2〜3日のアルバイトとグリーンウッドワークに関する諸々を組み合わせて生活しています。


質問1)森林文化アカデミー入学前は、何をしていましたか?

北海道森林管理局で国有林野施業に携わっていました。

質問2)アカデミーへの入学を選んだきっかけは?

森林が好きだからと国有林で仕事をしていたのですが、仕事として携わる大規模な森林施業と「自分の暮らし」に乖離を感じていました。また、林業という観点でも自分が一場面しかみていないことでモヤモヤとしており、次のステップを考えていました。アカデミーは川上から川下までを学ぶ機会があることが魅力的だったので入学しました。

質問3)アカデミーではどんな学びを得ましたか

知識や技術はもちろんですが、「試行錯誤したものがブラッシュアップされて、よりよいものになる」ことを実感できたことが大きいです。モノをつくるにしてもプログラムにしても、悩んで、苦しんで、やってみて、また悩んでという繰り返しで、1年次の「商品化・教材開発」は先生方の追求も厳しく辛かった授業のひとつですが、この試行錯誤のプロセスは大きな学びでした。

質問4)専門分野以外の授業やプロジェクトで、役立ったものはありますか?

「樹木同定」の授業では植物をみるポイントやマニアックな愛で方を知り、より植物を身近に感じられるようになりました。一般論としての樹木同定ではなく、ひとつひとつに個性を見出して愛でるのが楽しく、お互いの愛でポイントを話すことで更に楽しみが増すという、私の今の仕事でも大切にしている視点を得ました。「木材の販売戦略」では、木材流通を分析的に学べたことが、木材業界の方と話をする時に役立っています。また、「聞き書き」や「都市農山村交流」を通じて、資源を持続可能に使うための凝集された先人の知恵やお金ではない資源を持っている豊かさに触れることができたのは、自分の価値観に影響を与えたと思います。

草刈さんが在学中に取り組んだ課題研究をまとめた冊子「里山スプーン」より。

草刈さんが在学中に取り組んだ課題研究をまとめた冊子「里山スプーン」より。

質問5)今の仕事内容を教えてください。

週に2~3日は、近くの薪ストーブ屋さんでバイトをしています。月に2〜3度、出張型でグリーンウッドワークの講座をしています。あとは、地元でグリーンウッドワークの講座をしたり、販売用のスプーンなどを作りためたりしています。

私の場合は、個人事業主としてやっていることと、雇われ仕事を両方やることで金銭的にも精神的にもバランスが取れているなと思います。

森の中でのグリーンウッドワークの出前講座

森の中でのグリーンウッドワークの出前講座。奥の右端が草刈さん。

森の中でのグリーンウッドワークの出前講座。後列右が草刈さん

 

質問6)今の仕事で大変だなと思うことと、やりがいを感じることを教えてください。

グリーンウッドワークに関することは個人事業主としてやっているので、バランスのよい価格帯を模索したり、主催の方とやりとりをしたり、道具の整備をしたりと諸々のことを段取りつつ、どんな講座にするのかを考えていくのが大変であり、同時にやりがいのあるところです。

質問7)今の仕事を通して社会にどんな貢献をしていると感じますか?

自分のやっていることのうち「木に関すること」は社会貢献とは捉えておらず、自分の信じる「暮らしと木が寄り添うことは歓びである」ということを体現する行為だと思っています。課題研究のテーマであった「森林資源の自給的活用」を実践、普及をしているつもりです。

そういう活用を知らなかった人が「こういうやり方なら自分で木が使えるんだ」と知り選択肢が広がること、またそういう人が増えることで社会がもっと楽しくなるのではないでしょうか。

さまざまな北海道の木で作られた草刈さんのスプーン

さまざまな北海道の木で作られた草刈さんのスプーン

質問8)アカデミー入学前の仕事やアカデミーで得た学びが、今に活きていると感じることはありますか?

もちろん、アカデミーで得た学びは直接技術的知識的に今に活きていることがたくさんあります。でも、一見関係のないように思えるこれまでのこと全てが今に繋がってるんだなと最近はよく思います。自分の講座で初対面の人と話が盛り上がるとか、そんな風に活きることもたくさんあります。

質問9)今の仕事をしていく上でのモットー、若い人へのメッセージは?

納得できないことは、何に違和感を感じるのか突き詰める。あと意外となんとかなるものだと思うので、他人に惑わされずに自分が心地よくやれるバランスを探してみてはいかがでしょうか。