森と木のクリエーター科 木造建築専攻
//2024/01/17

5 性能設計

次世代版設計の先取り

建築の世界では、阪神淡路大震災と耐震偽装事件を背景に「構造性能」を明確に示すことが必須条件になりました。
さらに、京都議定書やパリ協定によって環境性能や「省エネ性能」の必要性が高まります。
高齢者のヒートショック防止の観点から「温熱性能」も注目を集めています。

ひとつの建築には、様々な性能がバランスよく必要です。
これからは、性能を定量的に把握し、きちんと説明する力が求められます。

アカデミーでは、建築の性能に関するトップランナーたちから、
実務に必要な構造設計、省エネ設計、防耐火設計など「木造建築の性能設計」の手法を学ぶことができます。

 

■木材性能設計

木材は、光合成によって作られた生物由来の材料です。
立木の状態では多くの水を含み、強度のバラツキもあります。
使う段階になると梁のたわみ(クリープ現象)、乾燥収縮、材面割れ等の事象が現れることがあります。

それらに対する、製材木取り、人工乾燥、ヤング係数による強度の仕分けなどの木材利用技術を知り、木材の長所短所を知ることで、木材を適正に使用することを学びます。
近年はウッドマイルズ(輸送時の環境指標)や森林認証制度(適正な森林管理指標)といった環境性能指標も拡がっています。

 

製材の様子

学内に設置された製材機による製材の様子

■構造性能設計

構造性能は、命に係わる性能です。
地震や台風の際に効いてくる耐力壁の量やバランス、壁に力を伝える床の水平構面や接合部、床を支える横架材の断面算定、建物のベースとなる地盤や基礎の耐力など考える要素は多岐にわたります。

それぞれを適切に設計し、計算することで、建物の安全性を確保します。
本学には、壁の実大試験機や梁の曲げ断試験機などの実験設備が充実しています。
計算値と実測値を比較しながら、効果的な学びを実現します。

木材開放試験室に設置された実大壁構造試験の様子

■環境・温熱性能設計

断熱、気密、日射制御、防露性能が温熱性能の基本です。
これらの性能を適切に設計することで、健康的で心地いい室内環境を実現します。
さらに、エネルギー消費性能やライフサイクルを通しての性能など総合的な計画も重要です。

壁や屋根、床、窓の性能計算や導入した設備から、室温やエネルギー、光熱費計算を学びます。
省エネルギー基準のベースとなる国土技術政策総合研究所・建築研究所監修の「自立循環型住宅への設計ガイドライン」を用い、定量的な評価をしっかり学びます。

また既存建物の温熱環境やエネルギー実測を行い、住まい方によるエネルギーや適温の違いも確認し、設計にフィードバックします。

アカデミー独自の室温シミュレーションツールの表示例

■防耐火性能設計

火災を発生させにくくする防火性能、火災時の安全を確保する耐火性能は、構造躯体が可燃物でできた木造建築を計画するうえで重要な性能です。
住まいにおける安心を確保するのに加え、大型の木造建築においては、不特定多数の利用者の安全を確保するために特に重要視されています。

一口に防耐火性能といっても、建物を壊さないようにする非損傷性、外部火災の熱を伝えない遮熱性、自らの火災を拡げないようにする遮炎性といったさまざまな性能が求められます。
大断面の木材は、燃えにくいという性質を利用する燃え代設計など新しい考え方も出てきました。
防耐火性能を定量的に設計することで、木造建築の魅力を引き出しながら可能性を拡げます。

アカデミーが設計に携わり燃え代設計を利用した大断面公共建築