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2017年11月28日(火)

研究の成果を発表!長野林大とエンジニア科の「木材利用総合演習発表会」

今日は、長野県林業大学校&アカデミーエンジニア科の合同授業で、「木材利用総合演習発表会」が行われました。

発表はエンジニア科2年生「林産業コース」の7名。
この一年、主に木造建築を通して、木材の利用促進を学んできた学生です。
テクニカルAの講義室が埋まりそうなほどの観客の前で、果たして研究成果の発表はスムーズにできるのか?

自分の伝えたいことを、大勢の前でスムーズに発表できる能力を身につけます。

会場のみなさんには評価アンケートを配ってあり、その書き方を説明する吉野先生。

この授業の目的は、プレゼンの技術をつけることと、論理的な思考を身につけることです。
研究テーマを各自で設定して、5月から取り組んできました。半年間続けた研究をパワーポイントとポスターにまとめて、一人15分の発表を行いました。

聴衆は、長野県林業大学校木材利用コースの方々+エンジニア科の一年生全員+木造建築教員で40人程度。緊張です!

秋吉拓海くん

まず一人目は、秋吉拓海くん「skate parkによる木材利用促進について」
自分が最も熱意を持っているスケートボードを、もっと身近なものにして普及させていくために「移動式ランプセクション」と呼ばれる滑走アイテムを製作しました。

合板をお湯とアイロンで曲げる製作過程や、スケボーに対する意識アンケートや、滑走の動画もある見応えあるプレゼンでした。

続いて、境田夕姫さん「県産材でつくる画用木炭」です。

境田夕姫さん

美術のデッサンで使う「画用木炭」を製作し、描き心地から新しい樹種での製品可能性を探り、県産材利用促進に繋げようというもの。


絵が好きな境田さんは、10種類の樹種の木炭×2種類の木炭紙=20枚にカップの絵を描いて実験。さらにアンケートをとって、アラカシとクリとエゴノキが、画用木炭として有用な可能性が高いことをまとめました。ポスターもよくまとまっていて見やすいですね。

長谷豪くんは「床の素材の違いによる衝撃に関する研究」と題して、色々な床材にビー玉やおはじきを落として、衝撃吸収の度合いを検証しました。

長谷豪くん


「研究を通して、長谷くんは床は木材にしたいですか?」という質問に「間違いなく木にします」と断言したのは、実験結果に沿った明快な答えでした。

服部潤くんは元高校球児。「木製バットの研究とエゴノキバットの製作」というテーマで、自分の興味を掘り下げていきました。

服部潤くん

アカデミーの先生たちに文献を借りたり、ミズノテクニクスの養老工場に見学で超有名バット職人である渡辺クラフトマンに取材したり、採取してきたエゴノキをバットにして実際に打つなど、とても密度のある研究となりました。エゴノキは木工専攻の工房にある旋盤をつかい、前野先生のご協力で見事にバットとして削り出していただきました。打ち心地の良いエゴノキバットは練習用には有用という結論が出ました。

平川匠くん「木部の「灰汁洗い」の研究」は、自分のお父さんの仕事の一つであり、日本古来から伝わる「洗い」の技術を検証するというもの。

平川匠くん

曝露実験によって、古式灰汁洗いが、木材を美しく経年変化させるための技術であることが判明しました。これは先日の日独木造建築シンポジウムでも話題になった「メンテナンス」において、非常に重要な示唆のある結果と言えます。

美谷添司くんは「含水率の違いによって薪の燃え方はどう変わるのか」という実験。

美谷添司くん

これは自力建設「風の円居」に設置された薪ストーブで実際に燃やして検証しました。着火は乾燥した材の方が早いが、燃焼の継続時間は乾燥材よりも含水率20パーセント程度の方が長いことがわかりました。会場の学生さんたちからも評判の良い実験でした。

最後は山川ひなさんの発表です。「うだつ計画」と題して、美濃市の空き家問題の現状報告と対策提案を行いました。

山川ひなさん

発表では、古民家を再生したコミュニティースペース兼貸し会議室の提案があり、空き家対策と同時に、町の活性化を第一に考えた提案となっていました。

周囲にはポスターが貼られ、エゴノキバットや古式灰汁洗いの検証をした無垢の板の実物、様々な樹種の画用木炭が展示されていました。
会場の学生と教員は、評価アンケートに点数をつけて提出します。

この日の様子を参考に、この中で一人が、岐阜大での研究発表者に選ばれます。
自分の興味を掘り下げていく面白さ、木材の奥の深さを感じたと思います。発表は練習すれば慣れて行きます。今後仕事先でも、積極的にプレゼンして見てください。

それにしても、エゴノキが画用木炭や練習用に適していたり、古式灰汁洗いの効用が明確になるなど、個人的にも驚きとおもしろさを感じた発表会でした!林産業コースのみなさん、大変お疲れ様でした!ご協力いただいた方にこの場を借りて御礼申し上げます。

講師 松井匠